自立訓練(生活訓練)と精神科デイケアの違いとは?目的・費用・対象者を比較
精神障害や発達障害のある方が社会参加や生活の安定を目指すうえで、「自立訓練(生活訓練)」と「精神科デイケア」はどちらもよく耳にする支援サービスです。しかし、どちらを選ぶべきか、あるいは併用できるのかといった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
この記事では、自立訓練と精神科デイケアの違いを制度・目的・対象者・プログラム・費用などの観点から詳しく解説します。比較表も掲載していますので、ご自身に合ったサービスを選ぶ際の参考にしてください。

■ 自立訓練(生活訓練)とは
目的と制度の位置づけ(障害福祉サービス)
自立訓練(生活訓練)は、障害者総合支援法に基づく「障害福祉サービス」(訓練等給付)の一つです(※1)。主な目的は、障害のある方が地域社会で自立した日常生活を送れるよう、生活能力の維持・向上を図ることです。
具体的には、生活リズムの安定、金銭管理、家事スキル、対人コミュニケーションなど、日常生活に必要な力を段階的に身につけていきます。
利用期間は、障害者総合支援法施行規則第6条の6において「2年間(長期間入院していたその他これに類する事由のある障害者にあっては、3年間)」と定められています(※1)。標準利用期間内で目標が達成できなかった場合は、市町村の審査により最長1年の延長が認められることがあります。
対象者
自立訓練(生活訓練)は「訓練等給付」のサービスのため、介護給付のような障害支援区分認定は必要ありません。利用にあたっては、お住まいの市区町村から「障害福祉サービス受給者証」の交付を受ける必要があります(※3)。
障害者手帳の所持は必須ではなく、医師の診断書や意見書等によって障害があると認められれば利用できる場合があります。
具体的には、精神障害(うつ病・統合失調症・双極性障害など)、発達障害(ADHD・ASDなど)、知的障害、高次脳機能障害、難病など、幅広い障害のある方が利用しています(※3)。なお、平成30年4月の制度改正により、それ以前は知的障害・精神障害に限定されていた対象が、障害種別を問わず利用可能となりました。
原則として18歳以上の障害者が対象ですが、65歳以上の方は介護保険サービスが優先されるため、利用に制約が生じる場合があります(自治体により取扱いが異なります)。
主なプログラム内容
自立訓練のプログラムは事業所によって異なりますが、一般的には以下のような内容が提供されます。
・生活スキル系プログラム(生活リズム改善・金銭管理・家事訓練・服薬管理など)
・コミュニケーション系プログラム(SST・集団認知行動療法・グループワーク)
・レクリエーション・創作系プログラム(創作活動・フィジカルプログラム・外出体験)
・就労準備系プログラム(自己理解・ITスキル・e-learning)
詳しいプログラム内容については、「自立訓練(生活訓練)事業所とは」の記事(記事①)もご参照ください。
■ 精神科デイケアとは
精神科デイケアの目的と制度の位置づけ(医療保険)
精神科デイケアは、医療保険制度に基づく「医療サービス」です。主な目的は、精神疾患の治療の一環として、症状の安定化・再発防止・生活リズムの改善を図ることです。
病院やクリニックなど医療機関で提供され、主治医の指示のもとで利用します。集団での活動を通じて対人関係の練習をしたり、心理教育によって病気への理解を深めたりすることで、社会復帰に向けた準備を行います。
対象者(精神科に通院している方)
精神科デイケアの対象者は、精神科に通院している方です。具体的には、統合失調症・うつ病・双極性障害・不安障害などの精神疾患を持つ方が利用しています。
通院している医療機関でデイケアを実施している場合は主治医に相談し、指示を受けて利用を開始します。障害者手帳の有無は問われないケースが多く、診断があれば利用できる場合があります。
精神科デイケアのプログラム例
精神科デイケアでは、以下のようなプログラムが提供されることが一般的です。
・心理教育(病気の理解・服薬の重要性・再発サインの学習)
・SST(ソーシャルスキルトレーニング)
・レクリエーション(文化系・運動系の活動)
・創作活動(絵画・手芸・音楽など)
・就労支援プログラム(復職に向けた準備など)
プログラムの内容や雰囲気は医療機関によって異なるため、見学してから利用を検討することが推奨されます。
利用時間ごとの種類(デイケア・ショートケア・ナイトケア・デイナイトケア)
精神科デイケアには、診療報酬上、利用時間によっていくつかの種類が定められています(※5)。
・精神科ショートケア:1日3時間を標準
・精神科デイケア:1日6時間を標準
・精神科ナイトケア:午後4時以降に開始される4時間が標準
・精神科デイ・ナイトケア:1日10時間を標準
自分の体調や生活リズムに合わせて、短時間のショートケアから始めて徐々に時間を延ばしていくといった使い方も可能です。
1日のスケジュール例
精神科デイケアの1日の流れの一例は以下の通りです。
・10:00 集合・ミーティング
・10:30 午前のプログラム(心理教育・創作活動など)
・12:00 昼食・休憩
・13:00 午後のプログラム(SST・運動・レクリエーションなど)
・15:30 振り返り・解散
医療機関によってスケジュールは異なりますが、午前と午後にそれぞれプログラムを設けている場合が多いです。
■ 自立訓練と精神科デイケアの違い【比較表】
自立訓練と精神科デイケアの主な違いを、制度・目的・対象・費用・スタッフなどの観点から比較表にまとめました。
制度の違い(障害福祉サービス vs 医療保険)
自立訓練は障害者総合支援法に基づく「障害福祉サービス」(訓練等給付)であり、市区町村が「障害福祉サービス受給者証」を発行して利用します。一方、精神科デイケアは医療保険制度に基づく「医療サービス」であり、医療機関が主治医の指示のもとで提供します。
このため、申請窓口や利用の流れが異なります。自立訓練は市区町村の障害福祉窓口で申請するのに対し、精神科デイケアは通院先の医療機関で主治医に相談して利用を開始します。
目的の違い(生活能力の向上 vs 治療的リハビリ・再発防止)
自立訓練の目的は「生活能力の維持・向上と自立した生活の実現」です。生活リズムの安定、金銭管理、対人関係の構築など、日常生活全般のスキル向上に重点が置かれます。
一方、精神科デイケアの目的は「症状の安定化・再発防止・治療的リハビリ」です。病気の理解を深めたり、服薬の重要性を学んだり、症状の悪化サインを早期に察知できるようにすることが中心となります。
もちろん、精神科デイケアでも生活リズム改善や対人関係の練習は行われますし、自立訓練でも病気への理解を深めるプログラムが提供されることがあります。しかし、主眼が「治療の延長」か「生活の自立」かという点で違いがあります。
対象者の違い
自立訓練は障害のある方全般(精神障害・発達障害・知的障害・高次脳機能障害・難病など)が対象です。障害者手帳がなくても、医師の診断書等で一定の障害があると認められ、市区町村から「障害福祉サービス受給者証」が交付されれば利用できます(※3)。
精神科デイケアは、精神科に通院している方が対象です。主治医の指示が必要であり、通院中の医療機関でデイケアを実施している場合に利用できます。手帳の有無は問われないことが多いです。
費用の違い(自己負担上限額 vs 医療費の自己負担)
自立訓練の費用は、所得に応じた月額自己負担上限額が設定されています。生活保護受給世帯および市町村民税非課税世帯の方は0円、市町村民税課税世帯(所得割16万円未満。入所施設利用者・グループホーム利用者を除く)の方は9,300円、それ以外の課税世帯の方は37,200円が上限です(※2)。実際にはサービス費用の1割を負担しますが、この上限額を超える分は支払う必要がありません。なお、厚生労働省の資料によると、近年の障害福祉サービス利用者の多くが自己負担なしで利用しているとされています(※2)。
精神科デイケアの費用は、医療保険の自己負担割合(原則3割。年齢により1〜2割)に応じて支払います。ただし、自立支援医療制度(精神通院医療)を利用すれば自己負担を原則1割に軽減できます(所得に応じて月額上限あり)(※6)。デイケアの種類(ショートケア・デイケア・ナイトケアなど)によって診療報酬点数が異なるため、利用時間が長いほど費用も高くなる傾向があります。
利用期間の違い
自立訓練(生活訓練)は、障害者総合支援法施行規則において、標準利用期間が原則2年間(長期間入院していた等の事由のある方は3年間)と定められています(※1)。一定期間集中的に訓練を行い、卒業後の進路につなげることを前提としたサービスです。標準利用期間で目標が達成できなかった場合、市町村の審査により最長1年の更新が認められる場合があります。
精神科デイケアには利用期間の上限がありません。主治医の判断により、症状が安定するまで、あるいは長期的に継続して利用することが可能です。何年も通い続けている方もいます(ただし診療報酬上は、長期利用の場合は週の算定回数や点数に制限がかかる仕組みがあります)。
スタッフの違い(生活支援員 vs 医師・看護師・PSW)
自立訓練のスタッフは、サービス管理責任者・生活支援員・精神保健福祉士・社会福祉士などの福祉専門職が中心です。生活全般の支援を行うことに特化しています。
精神科デイケアのスタッフは、医師・看護師・精神保健福祉士(PSW)・作業療法士・臨床心理士など、医療専門職が中心です。医師の診察や看護師による健康管理が受けられる点が大きな違いです。
■ 自立訓練と精神科デイケアは併用できる?
原則として併用は可能
自立訓練と精神科デイケアは、異なる制度に基づくサービスであるため、原則として併用が可能です。たとえば、午前中は精神科デイケアに通い、午後から自立訓練に通うといった利用の仕方もできます。
ただし、体力的な負担や通所頻度のバランスを考える必要があります。毎日両方に通うことは現実的に難しいため、週に何日ずつ利用するかを調整することが一般的です。
併用する場合の注意点
併用する場合は、以下の点に注意が必要です。
・通所頻度が多すぎると疲れてしまい、どちらも続けられなくなる可能性がある
・自立訓練と精神科デイケアのスタッフ同士で情報共有ができない場合がある
・それぞれのプログラムの目的が重複したり、逆に矛盾したりすることがある
これらの課題を避けるため、併用を検討する際は、主治医・相談支援専門員・自立訓練のスタッフ・デイケアのスタッフ全員に相談し、連携をとりながら進めることが重要です。
主治医・相談支援専門員と相談して決める
併用が適切かどうかは、個人の症状・体力・生活状況によって異なります。まずは主治医に「自立訓練も利用したいと考えている」と相談し、体調面で問題がないか確認しましょう。
また、相談支援専門員に相談することで、自分に合った利用計画を一緒に考えることができます。無理のない範囲でそれぞれのサービスのメリットを活かすことが大切です。
■ どちらを選ぶべき?判断のポイント
症状の安定化・再発防止が主な目的なら→デイケア
精神科デイケアが向いているのは、以下のような方です。
・退院直後で症状の安定化を最優先したい方
・再発を繰り返しており、病気の理解を深めたい方
・服薬管理や症状のモニタリングを医療的に行いたい方
・通院先の病院にデイケアがあり、主治医の勧めがある方
医療的な観点から症状を管理しながら、少しずつ社会参加の準備を進めたい方には精神科デイケアが適しています。
生活スキルの向上・社会参加の準備なら→自立訓練
自立訓練が向いているのは、以下のような方です。
・症状は比較的安定しているが、生活リズムが乱れがちな方
・金銭管理や家事など日常生活のスキルを向上させたい方
・将来的に就労移行支援や就職を目指しており、その前段階として生活基盤を固めたい方
・ひきこもり状態から社会参加を目指している方
「まずは生活を整えてから次のステップへ」という段階の方には、自立訓練が適しています。
デイケアから自立訓練へのステップアップも一般的
精神科デイケアで症状を安定させた後、自立訓練へステップアップするという流れも一般的です。デイケアで病気と向き合い、症状のコントロールができるようになってから、自立訓練で生活スキルを向上させ、最終的に就労移行支援や就職を目指すというルートをたどる方もいます。
デイケアと自立訓練は対立するものではなく、段階的に利用していくことで効果を発揮する場合もあります。生活リズムを整えることに不安がある方は、「障害があると生活リズムが乱れやすい?原因と整え方」の記事(記事⑩)も参考にしてください。
■ 就労移行支援との違いも知っておこう
自立訓練・デイケア・就労移行支援の3つの位置づけ
精神障害や発達障害のある方が利用できる主なサービスとして、精神科デイケア・自立訓練(生活訓練)・就労移行支援の3つがあります。それぞれの位置づけを簡単に整理しておきましょう。
・精神科デイケア:症状の安定化・再発防止を目的とした医療サービス
・自立訓練(生活訓練):生活能力の維持・向上を目的とした福祉サービス
・就労移行支援:一般企業への就職を目的とした福祉サービス
自立訓練と就労移行支援の詳しい違いについては、「自立訓練と就労移行支援の違いとは」の記事(記事②)をご覧ください。
■ メルディアライフネスト浦和の特徴
集団認知行動療法やSSTなど専門的プログラムも充実
メルディアライフネスト浦和は、埼玉県さいたま市浦和区にある自立訓練(生活訓練)事業所です。JR京浜東北線北浦和駅東口から徒歩4分とアクセスしやすい立地にあります。
メルディアライフネスト浦和では、8つのプログラムを提供しています。
・ライフプログラム(生活スキル・生活習慣の習得)
・ライフシミュレーショントレーニング(実生活を想定した練習)
・SST(ソーシャルスキルトレーニング)
・集団認知行動療法(思考・感情パターンの理解とストレス対処)
・クリエイティブタイム(創作活動)
・フィジカルプログラム(身体活動・体力づくり)
・ITスキル(パソコン操作・オフィスソフト)
・CSP(eラーニング:生活力向上に役立つ個別学習)
特に、集団認知行動療法やSSTといった専門的なプログラムも提供しており、思考パターンの理解や対人スキルの向上を図ることができます。これらのプログラムは精神科デイケアでも提供されることがありますが、自立訓練の枠組みで生活全般の改善と合わせて取り組めることがメルディアライフネスト浦和の特徴です。
看護師・精神保健福祉士等の専門スタッフが在籍
メルディアライフネスト浦和には、看護師、精神保健福祉士や社会福祉士といった専門資格を持つスタッフが在籍しています。看護師、精神保健福祉士は精神科デイケアでも活躍する専門職ですが、自立訓練の枠組みで生活全般の支援を行うことができる点が強みです。
また、メルディアライフネスト浦和では、見学時にEQS(生活能力評価)を体験できます。EQSとは、「心のしなやかさ」「コミュニケーション能力」「困難に立ち向かう力」の3軸で利用者の生活能力を評価するツールです。見学時にこの評価を受けることで、自分の強みと課題を客観的に把握し、支援の方向性を明確にすることができます。
さらに、S.I.P(Self-Insight Program)というマンツーマンのオーダーメイドプログラムも提供しています。集団プログラムが苦手な方や、何から始めればいいかわからない方に特に有効です。
プログラムの詳細については、「自立訓練(生活訓練)のプログラム内容とは」の記事(記事⑥)もご覧ください。
■ まとめ|迷ったら専門家に相談して自分に合ったサービスを選ぼう
自立訓練と精神科デイケアは、目的・制度・対象者・スタッフ構成などが異なるサービスです。精神科デイケアは症状の安定化・再発防止を目的とした医療サービスであり、自立訓練は生活能力の維持・向上を目的とした福祉サービスです。
どちらを選ぶべきかは、今のあなたの状態や目標によって異なります。症状の安定化を最優先したいなら精神科デイケア、生活スキルの向上や社会参加の準備をしたいなら自立訓練が向いています。また、デイケアで症状を安定させてから自立訓練へステップアップするという流れも一般的です。
迷ったときは、主治医・相談支援専門員・事業所のスタッフなど専門家に相談しましょう。見学や体験を通じて実際の雰囲気を確かめることも大切です。
メルディアライフネスト浦和では見学・無料相談を受付中です。お気軽にお問い合わせください。
お問い合わせ:https://mlda.jp/mlninquiry/
この記事はメルディアライフネスト浦和のスタッフが監修しています。
■ 出典一覧
※1 e-Gov法令検索「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律施行規則 第6条の6」
https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000100019
※2 厚生労働省「障害者の利用者負担」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/service/hutan1.html
※3 厚生労働省「障害福祉サービスの内容」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/service/naiyou.html
※4 厚生労働省「自立訓練(機能訓練・生活訓練)に係る報酬・基準について」
https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/000670106.pdf
※5 厚生労働省(地方厚生局)「精神科デイ・ケア等の留意事項通知(精神科ショート・ケア/デイ・ケア/ナイト・ケア/デイ・ナイト・ケア)」
https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kinki/iryo_shido/documents/tsuuchi_seishinkadeikea.pdf
※6 厚生労働省「自立支援医療(精神通院医療)について」





