絵本が生み出す “触れ合いの時間”を、 たくさんの人に届けたい「インクルーシブな絵本屋さん」
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トピックス2024年09月2日
絵本の読み聞かせ動画や保護者の方が社会と繋がれる場を提供するなど多岐にわたり活動中の「絵本屋だっこ」。北海道を拠点に絵本作りを通じて障がい児支援をしたいと様々なサービスを展開する、代表・しょうじあいかさんにお話を聞きました。
<しょうじさんご家族>
障がい理解を広めたいという想いから
絵本屋だっこを始めたきっかけは、「2023年2月に全国の障がい者施設に絵本を配るクラウドファンディング(以下、クラファン)を行ったのですが、その準備をする中で生まれた構想が〝絵本屋だっこ〞でした。絵本をただ配るだけでなく、その先にどんな未来があるのか提示した方が良いとアドバイスを頂いて、〝何か障がい児支援に繋がる一つの発信源になる場所を作ったら、個人ではできないようなこともできるのではないか〞と思って作った場です」。そう語るのは、ご自身の長男が結節性硬化症という難病をもつ、しょうじあいかさん。言語理解が難しい息子さんにも読んであげられる絵本を作りたいと、インクルーシブ絵本作家として活動しています。メインの取り組みは、絵本の売上を活用した絵本配布で、絵本を届けることで障がいについて知ってもらう機会を増やしていくこと。「私は元々前に出るタイプではなかったのですが、突き動かされるようにクラファンに挑戦しました。すると、思った以上にたくさんの応援を頂けて、おかげさまで目標に対して300%超で達成することができました。本当にありがたくて、気持ちにお返ししたい、できることをちゃんと続けていこうと、皆さんの存在が原動力になっています」。
<絵本の制作風景。絵本を通じて障がい理解を広めたいと奮闘するしょうじさん。>
絵本には答えではなく、〝何だろう〞と考えるストーリーを
絵本とはどのように作られているのでしょうか。絵本作りで大切にしていることについてしょうじさんに伺うと、「まず、必ず絵本のテーマを設定します。どのような年齢で、どのような状態の方にどういうことを届けたいか。例えば、私は自分の息子に向けた絵本を作るので、〝できるようになってほしいこと〞など、そういう願いも込めたテーマで作っています。〝見る練習にする絵本〞にしよう、〝触れ合いを楽しめる絵本〞にしよう、〝耳から楽しめる絵本〞にしようという風にテーマを設定します。息子は最重度で知的障がいがあり、言語理解も全くない状態で、基本的にそういった方を対象にした障がい児向け絵本という感じになっています。近頃は障がい理解のための絵本も作っていて、ストーリーへの共感を大切にしつつも、答えを提示しすぎず、ストーリーの中で読者自身に考えてもらえるようにしています。〝障がいって何だろう。普通って何だろう〞、そういうところを考えてもらえるようなストーリー構成にしています」と話します。
制作した中でも特に印象深い作品は「ぼくのにぃに」だそう。「この絵本は私の中で特別で、我が家をモデルにしたような絵本になっています。作家を始めて最初の8冊ほどは息子のための絵本を作っていたのですが、その後に思い立って作ったのがこの絵本です。長男の2歳下に妹がいるのですが、彼女の体験をベースにしたストーリーで、きょうだい児目線で、障がい児のいる家庭を描いたものです。制作時、まずは障がい児のいる家庭を知ってもらいたいと、〝読み聞かせ動画〞を作り、絵本は欲しい人がいれば買えればいいかなと考えていたのですが、動画の公開後に思った以上に反響があり、それこそ同じような家庭の方は『もう涙が止まらなかった』などとても共感してくださって、絵本を通じて障がいへの理解を広めていくことが使命だと感じた一冊でした」と話します。
<活動スタートのきっかけ、クラファンでは障がい児施設などにも多数配られた。>