息子がくれた気づき。社会と福祉が もっと“なだらか”になることを願って
-
トピックス2024年09月30日
2018年に“完結”したロックバンド・チャットモンチーの元メンバー福岡晃子さんの長男には発達障がいがあります。自身の初随筆集「おかえり」で告白したお子さんのことを移住先の徳島で暮らす日々とともに伺いました。
息子に発達障がいがあることも自分にとっては素敵な出会い
ロックバンドの活動を完結させ、出身地の徳島県に移住し、家族3人で暮らしている福岡さん。現在は、楽曲制作やイベントスペース運営などをされています。4歳になる息子さんには発達障がいがあることを「おかえり」の中で告白しました。「徳島に移住して、気持ちの変化もあった中でお声がけいただいてエッセイ本を制作しました。何かメッセージ性を込めているわけではなく、自分の今の状況をお知らせするという感じで。なるべくありのままの自分を書こうとする中で、家族の存在は自然と出てきました」と福岡さん。息子さんはご自身にとってどのような存在か伺うと、「息子中心というよりも、息子そのものに自分がなっているような感じで、全部息子が主軸になってもそのことが意外と苦じゃありませんでした。彼の喜びが自分の喜びになり、悲しみが自分の悲しみになることがごくごく自然に受け入れられています。息子に発達障がいがあることも、私にとっては結果的にとても素敵な出会いで、知らなかった世界を知るきっかけをくれたと思っています」と話します。
自然に帰る心地よさを体感する日々と福祉資源の現実
「今暮らしているところは本当に自然が豊かで、息子は毎日のようにカエルや虫を捕りに行くんです。それについて行くと強制的に田んぼに入ったり、山に行ったり、川に行ったりして。昔私もこういう遊びをしていたけれど全く忘れていて、改めて自然に帰るととっても心地が良かったんです。普段は楽曲制作など、家にこもりがちなのですが、息子が引っ張り出してくれるので、彼をここに連れて来られてよかったと思うと同時に私も一緒に楽しんでいます」と福岡さん。逆に大変なことはどのようなことか聞いてみました。「今は療育に片道1時間かけて通っています。小児科もないような地域なので、そういった施設や制度の選択肢はやはり少ないなと感じます。息子が成長するたびに新しい課題も出てきますが、それに対しては息子の成長とともに互いの信頼関係が深まり、一緒に乗り越えようとしている感じはあります。しかし、本人は発達障がいのことは気にしていないというか、分かっていない一方で、他所と比べられる瞬間にうちの子だけできないと、一般的な社会との壁を私が感じてしまうこともあります。そういう社会の中で生きているんだなと、とても考えさせられますし、まだまだ答えのない船旅中です」。