“世界を奏でるピアニストになりたい” 夢に向かって自身と闘うピアニスト
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トピックス2025年02月10日
高校生でピアニストとしてデビューし、注目を集める紀平 凱成さん(23歳)。視覚過敏や聴覚過敏と闘いながら、「人を笑顔にしたい」とたくさんの音楽を奏でています。今回はご本人とご両親に話を伺いました。
ピアニストの片鱗は幼い頃からの即興演奏力に
両親の影響から幼い頃より楽器や音楽に囲まれて育ち、2歳から鍵盤で遊び始めたという凱成さん。「5歳の頃にはもう好きだったね」と自身を振り返ります。7歳の頃にはピアニストになりたいと宣言をしていたと言います。作曲家・カプースチンを始めとしたクラシックの他、ロックやポップス、ジャズなどジャンルを問わず音楽が好きだそう。「家にある70、80年代のCDをよく聞いていて、それを凱成が鍵盤で再現していたんです。周りに鳴っている音を弾き始めたのはそこからです」とお父様は話します。
絶対音感を持ち、その場ですぐに耳で音程を取れるという凱成さんは、即興演奏も大得意。取材中も、その時感じたものを音楽にして弾いてくれました。「音楽だけでなく、ノイズや生活音も全て音で聞こえているようです。作曲をするときも、五線譜を使って、鍵盤も触らず一心不乱に書き続けるんです。メロディーから思いつくとかではなくて、彼の頭には音楽が出来上がった状態で降りてくるようです。凱成には人と違う音感があるなと思っていましたが、彼がピアニストになりたいと言い始めたので、それならやり通せるようにサポートをしようと思いました」と語ります。
過敏を自分で克服する、意思を持って夢を叶える
情景や人の心境をそのまま作曲することが得意な凱成さんですが、ピアニストとして活動する転機は何だったのでしょうか。
「高校生の頃、視覚過敏や聴覚過敏が強く、人の顔を見ることもできなくて、学校に行くときもずっと目を瞑ったままでした。しかし、ピアニストになりたいということで、凱成の演奏動画をYouTubeに上げていたところ、ご縁があり人前で演奏させていただくことになり、それがデビューとなりました。そこから凱成の意識も変わり、この状態では人前でコンサートができないと、自分で克服するための努力を始めました。自分の曲を人に聞いてもらいたいという想いでピアノをやってきたので、それを1回達成できたことでモチベーションになったのだと思います」とお母様。「電車やツアー会場には凱成にとって気になる音があるので、自ら事前に調べてYouTubeを見て予習して。それでも最初は耳を塞いでいるのですが、だんだん慣らしていって。今は過敏の部分で心配することはなくなりました」というお父様に続き、「きっかけはそこ、7月15日で17歳の時だね。でも、中学3年生の時、11月23日のその時(のコンサート)はイヤホンしてた」と凱成さん。
世界の様々な場所に行って、現地で感じるものを音にしたい
将来の目標を聞くと、「世界を奏でるピアニストになりたい。今年はCDをもっと作るために頑張りたいです」と凱成さん。「世界を奏でるというのは、世界の様々な音楽や文化、食べ物、建築物などを現地に行って肌で触れて感じたことを音にしていくということのようです。
紀平 凱成さん
2001年生まれ。3歳の時に自閉症スペクトラム症と診断される。幼児期より風の音や鳥の声などを音符で表現し、楽器で遊ぶ内に音楽理論を自然と習得。鍵盤に触れずに白紙に一気に音符を並べる独特のスタイルで数千の曲を書きためる。作品集「HOORAY!」が発売中。