怒りが生じるメカニズム‐カウンセリングでできること‐
こんにちは。カウンセラーの芳川です。
日常生活を送る中で、ついついイラッとすることって誰しもありますよね。
イラッとすることが重なると、いつの間にか怒りに振り回されて疲れてしまうなんてこともありますね。
今回は【怒り】が生じるメカニズムについて解説したいと思います。
怒りが生じる脳のメカニズム
脳には様々な部位がありますが、私たちの怒りの感情に大きく関わっているのは、脳の中心部に位置する『大脳辺縁系』と表面部分にある『大脳新皮質(前頭葉)』です。
大脳辺縁系は感情や本能(食欲、睡眠欲、性欲など)を司る原始的な部位で、怒りの感情を生じさせます。
一方で、大脳新皮質のなかにある『前頭葉』は思考力の中心を担い、その場に合わせた状況判断やコミュニケーション、感情のコントロールや意思決定などを行ってくれます。いわば脳の司令塔です。
つまり、怒りの感情は大脳辺縁系で生まれ、前頭葉でコントロールするという仕組みになっています。
ちょっとしたエピソードで例えるのであればこんな感じです。
〈①感情が動く出来事が生じる〉
締め切りに追われて忙しいタイミングで上司から新たな業務の依頼を受ける。
〈②出来事を受けて大脳辺縁系が活発になる〉
「締め切りまでに終わらないかもしれない…」と不安や焦りを感じる。
「こんなに忙しいのに仕事を増やすなんて…!」と怒りの感情が生まれイライラする。
〈③感情を調整するために前頭葉がはたらく〉
「ここで焦っても仕方ない。早く終わらせたいけど、一旦優先順位を確認して整理しよう」
「上司に苛立ちをぶつける訳にはいかない。一呼吸入れるためにトイレへ行こう」などと思い直して、落ち着いて判断しようとする。
このように私たちの脳内では、「感情が生まれる」⇒「コントロールする」が繰り返し行われているのです。
発達障害、ADHDの行動特性による困りごとは、前頭葉の働きの低下が要因の一つであるとも言われていますし、うつ病や不安障害などの病気も、前頭葉の感情をコントロールする機能が弱まっていることから、不安やイライラを感じやすい、気分が落ち込みやすくなるなどの症状が持続すると言われています。
怒りの対処『6秒待つ』ことの効果
怒りが生じるメカニズムは分かったけれども、怒りに振り回されて困っているんだよなって人も多くいますよね。
たくさんのアプローチがありますが、瞬間的に怒りが爆発しやすい方には「6秒待つ」ことをおすすめします。
この話をすると、「いやいや、6秒待ったけど怒りは収まらなかった」「試したけど効果を感じなかった」とよく言われます。
それもそのはずで、「6秒待つ」ことは「怒りが無くなる」ことへの直接的な効果はありません。
ではどのような効果があるのか。
再び脳の仕組みの話に戻るのですが、大脳辺縁系で怒りが生じた後、前頭葉が感情コントロールを始めるまでに3〜5秒の時間がかかると言われています。
怒りを感じた際に「6秒待つ」ことのメリットは、前頭葉が状況判断をしてアクションを決定したり気持ちを落ち着かせるまでの間に、イラっとした勢いで怒鳴ったり、衝動的に余計なことを言って後悔しないための待機時間ということです。
ただし、「6秒待つ」を実践できるのは「怒りの感情に気づく」ことができる人です。自覚する前に怒っている、という人は怒りの感情に気づくことからスタートする必要があります。
怒りの感情との向き合い方
「怒り」というのは決して手に負えないような感情ではありません。人が生きていく上でとても大切な感情の一つでもあります。
メルディアウェルネスのカウンセリングでは、皆さんがより良い人生を歩めるよう、カウンセラーと共に認知行動療法やアンガー・マネジメントに取り組み、怒りについての理解を深めて感情のコントロール方法を身に着けていけるようサポートをしています。