インクルーシブ教育システムの先にある 共生社会を作りたい~子どもたち一人ひとりに対応する柔軟な学校を目指して~
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トピックス2025年03月3日
特性により支援が必要な子どもたちの教育支援を研究する国立特別支援教育総合研究所(以下、特総研)にて研究員の久保山さんと総務部の齊藤さん、大藤さんに「インクルーシブ教育システム」についてお話を伺いました。
スタートは、障がいのある子どもへ質の高い教育提供を目指して
昭和46年、障がいのある子どもたちへの教育ニーズの高まりを受け、研究所が建てられました。その二年後、研究所の隣には養護学校(当時の名称:久里浜養護学校)が建てられ、質の高い教育の提供に向け学校と一体になりながら研究がされてきました。当時、地元の学校では教育が難しいという子どもたちが全国から集まり、寄宿生活をしながら学びを行っていたそうです。昭和54年、養護学校の就学が義務教育となった際も特別支援教育の先駆けとなっていたのがこの特総研と久里浜養護学校です。その後だんだんと役割は広がり、障がいの重い子どもだけでなく、発達障がいや自閉症などの子どもに対する研究も行うようになりました。平成13年から独立行政法人になり、平成19年に現在の特別支援教育総合研究所という名称になりました。
通常級と特別支援教育の発想の融合で柔軟な学びの場を
特総研では実践的な研究、教員への研修、情報発信という三本柱を軸に、近年〝インクルーシブ教育システム〞推進に力を注いでいます。「一つは『可能な限り同じ場でともに学ぶことを目指す』こと。もう一つは『障がいのある子ども一人ひとりのニーズに対応する教育を提供する』というものです」と久保山さん。齊藤さんは多様な学びの場について、「例えば、通級(通級による指導)があれば基本的には通常級(通常の学級)で過ごしつつ、苦手を克服するための学びを通級で行う。それが通常級での学びの充実につながります。一方で、通級や特別支援学級に頼りすぎるのではなく、通常級での支援も大切。あくまで個々の子どもに応じて何が必要か判断してほしいです」と言います。
鍵となるのは通常級の授業と言う久保山さん。多様な子どもがいることを前提とした柔軟な学びの場を目指してほしいと語ります。「ICT環境の整備により一人一台端末が配られ、自由に調べられる時代。じっと座って授業を受けるだけではなく、動きのあるアクティブな学びこそが本当の学びに繋がるのではないかと考える教員が既に増えています」。
独立行政法人国立特別支援教育総合研究所
日本唯一の特別支援教育のナショナルセンターとして「インクルーシブ教育システム」の構築を目指し、実践的な研究、教育関係職員への専門的、技術的な研修を行っている。
https://www.nise.go.jp/