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発達障害の人が一人暮らしを続けるコツ|特性別の困りごとと生活の工夫・支援を解説


2026年08月21日

「一人暮らしをしてみたいけれど、家事や生活の管理がうまくできるか不安」——発達障害のある方やそのご家族から、こうした声はよく聞かれます。けれども、うまくいかないのは努力や能力が足りないからではなく、多くの場合、自分の特性に合った工夫や仕組みが整っていないだけです。この記事では、ASD・ADHDの特性ごとの困りごとを整理したうえで、場面別の具体的な工夫や生活費の目安、頼れる支援サービスまでを解説します。

不安がる男性

発達障害の人が一人暮らしで直面しやすい困りごと

発達障害は、発達障害者支援法において「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するもの」と定義されています。生まれつきの脳の働き方の違いによるもので、やる気や努力不足によって起こるものではありません。一人暮らしでは家事や金銭管理、体調管理をすべて自分でこなすため、それまで表に出にくかった特性が困りごととして現れやすくなります。

代表的なタイプに自閉スペクトラム症(ASD)と注意欠如・多動症(ADHD)があります。同じ「困った」に見えても、背景の特性が違えば有効な対処も変わります。ただし種類を明確に分けて診断することは難しく、特徴が重なり合う場合も多いとされています。診断名にとらわれすぎず、「自分は何が得意で何が苦手か」に目を向けることが対処の第一歩です。

ASD(自閉スペクトラム症)の特性による困りごと

ASDのもとになる自閉症は、対人関係の障害、コミュニケーションの障害、限定した常同的な興味・行動および活動という3つの特徴をもつ障害とされています。また、大勢の人がいる所や気温の変化などの感覚刺激への敏感さで苦労する一方、見通しが立つときはきっちりと物事を進められるという面もあります。

一人暮らしでは、強いこだわりから決まった手順以外の家事に手をつけにくい、逆に手順が崩れると一気にできなくなる、掃除機の音や洗剤のにおいが苦手で家事が進まない、役所とのやりとりで曖昧な言い回しの意図が読み取れず戸惑う、といった困りごとにつながることがあります。「だらしない」のではなく特性が影響していると理解することが、適切な工夫につながります。

ADHD(注意欠如・多動症)の特性による困りごと

ADHDは、注意持続の欠如、あるいは年齢や発達レベルに見合わない多動性や衝動性、またはその両方が特徴です。具体的には、待つことが苦手でうろうろする(多動性)、うっかりして同じ間違いを繰り返す(注意力散漫)、約束や決まり事を守れないことがよくある(衝動性)といった形で現れます。

一人暮らしでは、「ゴミ出しの曜日を忘れて部屋にゴミがたまる」「支払い期限をうっかり過ぎる」「衝動的に買って家計が乱れる」といった形で表れがちです。一方でこの特性は、次々と周囲のものに関心を持ち、周囲のペースよりもエネルギッシュにさまざまなことに取り組めるという強みとも表裏一体です。困りごとを仕組みでカバーできれば、強みを活かした暮らしがしやすくなります。

共通して起こりやすい生活面の課題

どちらにも共通して起こりやすいのが、生活リズムの乱れです。起床や食事の時間を管理してくれる人がいないため、昼夜が逆転したり食事が偏ったりしやすくなります。また家事・金銭管理・手続きなど複数のことが重なり、優先順位がつけられずに後回しになることもあります。

もう一つ見落とされやすいのが、通院や服薬といった健康面の自己管理です。家族の声かけがなくなることで受診が途切れてしまうこともあります。困りごとが積み重なると心身の負担は大きくなりますので、無理に抱え込まず、次章以降の工夫や支援を早めに取り入れることが大切です。

【場面別】一人暮らしの困りごとと具体的な工夫

ここからは場面ごとに具体的な工夫を紹介します。ポイントは、「気合いで頑張る」のではなく、特性に合わせて仕組み・環境・道具でカバーするという考え方です。公的な支援の現場でも、手順を示す、体験練習をする、新しく挑戦する部分は少しずつにするといった「スモールステップ」が基本とされています。

家事(掃除・洗濯・料理)を続ける工夫

家事は「毎日きちんと」を目指すと負担が大きく、続きにくくなります。掃除は「気になった場所だけ」「1日5分だけ」と範囲と時間を区切る、洗濯は曜日を固定してルーティン化する、といったハードルの下げ方が有効です。

料理は、最初からすべて手作りにこだわらず、レトルトや冷凍食品、総菜を活用して構いません。においが苦手な場合は電子レンジ中心にするなど、音や肌触り、室温といった感覚面を調整する工夫は、公的な配慮の考え方としても示されています。「決めた手順どおりに進めたい」場合は、手順を紙に書いて貼っておくと取りかかりやすくなります。

金銭管理・支払いの工夫

金銭管理は、一人暮らしでつまずきやすい代表的な場面です。まずは全体の目安を知っておくと計画が立てやすくなります。総務省の家計調査によると、2025年の単身世帯の消費支出は1か月平均173,042円で、内訳は食料49,321円、住居21,667円、光熱・水道13,333円、交通・通信19,334円などです。ただしこれは持ち家の方を含む全年齢の平均のため、賃貸の場合の家賃はこれより高くなるのが一般的です。地域の家賃相場を調べ、別に見積もっておきましょう。

衝動買いを防ぐには、「使ってよいお金」と「動かさないお金」を口座やアプリで分けておくのが効果的です。家賃や光熱費などの固定費は口座振替やカード払いで自動化すると、支払い忘れを防げます。現金の管理が苦手ならキャッシュレス決済に一本化し、アプリで利用履歴を自動記録する方法も。使った額が可視化されると、使いすぎに気づきやすくなります。

生活リズム・睡眠を整える工夫

基本は、起きる時間と寝る時間をできるだけ一定にすることです。とはいえ「意志の力」だけで続けるのは難しいため、仕組みで支えます。朝は光で目が覚めるようカーテンを少し開けておく、目覚まし時計を手の届かない場所に置く、決まった時間に予定(通所や外出など)を入れておく、といった方法が有効です。

日中に活動する場所や役割があると、生活リズムは安定しやすくなります。詳しくは生活リズムを整えるコツもあわせて参考にしてください。

片づけ・持ち物管理の工夫

整理整頓が苦手な場合、「きれいに収納する」より「探さなくてよい仕組み」を優先すると続きます。物の定位置を決めてラベルを貼る、鍵や財布は玄関の一か所にまとめる、収納は「見えて・すぐ戻せる」オープン収納にする、といった工夫が有効です。

忘れ物が多い場合は、鍵や財布に紛失防止タグをつけてスマホで探せるようにする方法もあります。「しまい込むと忘れる」なら、あえて出しておく収納にするなど、自分の傾向に合わせた調整が大切です。

対人・近所づきあい/手続きの工夫

近所づきあいや役所・管理会社とのやりとりは、負担になりやすい場面です。あいさつ程度の関係を保てば十分で、無理に深い付き合いをする必要はありません。手続きでは、事前に「何を・どの順番で・どこまで」聞くかをメモにまとめておくと落ち着いて対応できます。

電話が苦手なら、メールやオンライン申請を使える窓口を選ぶのも一つの方法です。相談できる先をあらかじめ決めておくと、トラブルが起きても一人で抱え込まずに済みます。

困りごとを助けるツール・仕組みの活用

工夫を「覚えておく」「意識し続ける」こと自体が負担になりやすいのが発達障害の特性です。記憶や注意を人の努力に頼らず、道具や仕組みに肩代わりさせる発想が役立ちます。

スマホアプリ・リマインダー・自動化の活用

スマホのリマインダーやカレンダーは、最も手軽で効果的なツールです。ゴミ出しの曜日、支払い期限、通院日などを登録して通知を設定しておけば、「うっかり忘れ」を大きく減らせます。ToDoアプリでタスクを一覧化する方法は、優先順位づけが苦手な場合にも有効です。

支払いを自動化して家計簿アプリと連携させれば記録の手間も減り、服薬管理アプリやお薬カレンダーを使えば飲み忘れも防げます。一度設定すれば継続的に機能するのが利点です。ただし設定や使い方が分からないと続かないこともあるため、次章で紹介するような場で実際に練習しながら自分に合う仕組みを見つけると定着しやすくなります。

一人暮らしの前に「生活力」を整えるという選択肢

工夫やツールを知っても、「実際にできるか不安」「一人だと続かない」という方は少なくありません。そうしたときは、一人暮らしを始める前の準備段階として、生活スキルを実践的に身につけられる福祉サービスを利用する選択肢があります。

なお、住まいの形は一人暮らしだけではありません。支援を受けながら共同生活を送るグループホーム(共同生活援助)もあり、生活保護または低所得の世帯を対象に、家賃について月額1万円を上限とする補足給付が行われています。生活力を整えてから一人暮らしに進む、グループホームを経由するなど、進み方は人それぞれで構いません。

自立訓練(生活訓練)で生活スキルを実践的に身につける

自立訓練(生活訓練)は、入浴・排せつ・食事等に関する自立した日常生活を営むために必要な訓練や、生活等に関する相談・助言を行う障害福祉サービスです。生活能力の維持・向上に焦点を当てており、家事や金銭管理、生活リズムづくりといった一人暮らしに直結するスキルを練習できます。

対象となるのは、地域生活を営むうえで生活能力の維持・向上等のため一定期間の訓練が必要な方です。具体例として、入所施設や病院を退所・退院して地域生活への移行を図る方、特別支援学校を卒業した方、継続した通院により症状が安定している方などが挙げられています。障害者総合支援法の対象には、身体障害者・知的障害者に加え、発達障害者を含む精神障害者が含まれます。つまり発達障害のある方は以前から生活訓練の対象です。2018年(平成30年)4月には、機能訓練は身体障害、生活訓練は知的障害・精神障害と対象者を限定していた施行規則が改正され、障害の区別なく利用できるようになりました。

実際、生活訓練では精神障害のある方の利用割合が全体の約3分の2を占めています。利用期間は標準で2年間(24か月)、長期間入院・入所していた方などは3年間(36か月)です。

費用は、世帯の所得に応じた4区分の負担上限月額が設定され、ひと月に利用したサービス量にかかわらずそれ以上の負担は生じません。生活保護受給世帯と市町村民税非課税世帯は0円、市町村民税課税世帯(所得割16万円未満)は9,300円、それ以外は37,200円が上限です。ただし入所施設利用者(20歳以上)とグループホーム利用者は、市町村民税課税世帯の場合37,200円の区分となります。なお18歳以上の方は、所得を判断する際の「世帯」の範囲がご本人と配偶者であり、同居するご家族の収入は判定に含まれません。運用の細部は自治体により異なるため、お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口にご確認ください。

メルディアライフネスト浦和のプログラム

埼玉県さいたま市の自立訓練(生活訓練)事業所であるメルディアライフネスト浦和では、一人暮らしを目指す方の準備を実践的なプログラムで支えています。看護師・臨床心理士・精神保健福祉士・社会福祉士という多職種のスタッフが在籍し、心身の健康から生活・福祉の相談まで多面的にサポートできる体制です。支援の中心となるのが、一人ひとりの状態に合わせて組み立てる10のプログラムです。ライフプログラム、ライフシミュレーショントレーニング、SST(ソーシャルスキルトレーニング)、集団認知行動療法、コネクトプログラム、グループワーク、クリエイティブタイム、フィジカルプログラム、ITスキル、CSP(e-learning)から構成されています。

一人暮らしの準備と特に相性がよいのが、ライフシミュレーショントレーニングです。実際の生活場面を想定した実践練習を通じて、家事や金銭管理、手続きを「知る」だけでなく「やってみる」ことができます。対人関係のつまずきが気になる方には、対人スキルを段階的に習得するSSTも役立ちます。

支援では、まずEQS(生活能力評価)で「心のしなやかさ」「コミュニケーション能力」「困難に立ち向かう力」の3軸から現在の状態を可視化します。そのうえでS.I.P(Self-Insight Program)というマンツーマンのオーダーメイドプログラムで、自己理解を深めながら豊かな社会生活に向けて症状への対処法を身につけていきます。EQSの結果をもとに10のプログラムから必要なものを選び、組み合わせを変えながら進められるため、自分の特性に合った工夫を確立しやすいのが特徴です。個別支援計画はおおむね3か月ごとに見直し、本人の変化に合わせて柔軟に修正します。

また、リービングネストプログラムとして、生活リズムを整える基礎ステージ(3〜6ヶ月)、経験を重ねる体験ステージ(6ヶ月)、進路を探求する探求ステージ(3ヶ月)、進路に向けて歩みだす始動ステージ(6ヶ月)の4段階の道筋があり、段階を追って積み上げていける設計です。

1日の流れも一定に保たれています。10:00に通所して朝礼から始まり、午前のプログラム、昼休憩をはさんで午後のプログラム、15:00からの振り返りを経て帰宅する規則的なスケジュールが、生活リズムづくりそのものの練習になります。個別支援計画に応じた調整も可能です。

同事業所では、2年間で就職や進学に向かうための生活力を身につけることを原則とし、自立訓練の枠組みの中で就職活動のサポートまで一貫して行える点が強みです。就職までにもっとトレーニングを積みたい方には、次のステップとして、グループ内の就労移行支援であるメルディアトータルサポートとの連携も活用できます。

発達障害の一人暮らしで頼れる支援・相談先

一人暮らしは「一人で全部やること」ではありません。困ったときに頼れる相談先を知っておくことが、暮らしを続けるうえで大きな支えになります。

使える福祉サービスの概要(詳細は総論記事へ)

発達障害者支援センターは、発達障害のある方への支援を総合的に行う専門機関です。保健・医療・福祉・教育・労働などの関係機関と連携しながら、ご本人とご家族からの相談に応じ、指導と助言を行っています。ただし各センターの事業内容には地域性があるため、詳しくはお住まいの地域のセンターにお問い合わせください。

生活と仕事の両面を相談したい場合は、障害者就業・生活支援センターがあります。生活面では、生活習慣の形成、健康管理、金銭管理等の日常生活の自己管理に関する助言や、住居・年金・余暇活動など地域生活・生活設計に関する助言を受けられます。就業面では就職に向けた準備支援や職場定着支援などを行い、ハローワークや地域障害者職業センター、福祉事務所、保健所、医療機関とも連携しています。令和8年4月時点で全国に340センターが設置されています。

このほかにも、住まいや経済面を支える制度、就労に向けた支援サービスなど、活用できる仕組みは多岐にわたります。制度全体の詳しい解説は障害のある方の一人暮らしを支える支援制度まとめで紹介しています。また精神障害のある方の一人暮らしのポイントや、発達障害で仕事が続かない理由と対処法もあわせてご覧ください。

自分に合った支援を選ぶには、まず「今、何に困っているか」を整理し、対応する窓口に相談してみることが第一歩です。早めに相談すれば、つまずきが大きくなる前に対処しやすくなります。

まとめ

一人暮らしのつまずきは努力不足によるものではなく、特性に合った工夫や仕組みが整っていないことが背景にある場合がほとんどです。ASD・ADHDそれぞれの特性を理解し、家事・金銭管理・生活リズム・片づけ・手続きといった場面ごとに仕組み・環境・道具でカバーしていくことで、暮らしはぐんと続けやすくなります。生活費の目安を把握しておくことも、不安を減らす助けになります。

そして、一人で頑張り続ける必要はありません。スマホのリマインダーといった身近なツールから、発達障害者支援センターや障害者就業・生活支援センターなどの相談窓口、一人暮らしの前に生活スキルを実践的に練習できる自立訓練(生活訓練)まで、頼れる選択肢は数多くあります。自分の特性を知り、合った工夫と支援を組み合わせていくことが、自分らしい一人暮らしへの近道です。

メルディアライフネスト浦和では見学・無料相談を受付中です。お気軽にお問い合わせください。

お問い合わせ:https://mlda.jp/mlninquiry/

この記事はメルディアライフネスト浦和のスタッフが監修しています。

出典一覧

※1 国立障害者リハビリテーションセンター 発達障害情報・支援センター「発達障害とは」

https://www.rehab.go.jp/ddis/understand/whatsdd

※2 国立障害者リハビリテーションセンター 発達障害情報・支援センター「各障害の定義」

https://www.rehab.go.jp/ddis/understand/definition

※3 厚生労働省「発達障害の特性(代表例)」(精神・発達障害者しごとサポーター養成講座 e-ラーニング版)

https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/shougaishakoyou/shisaku/jigyounushi/e-learning/hattatsu/characteristic.html

※4 総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2025年(令和7年)平均結果の概要」

https://www.stat.go.jp/data/kakei/sokuhou/tsuki/pdf/fies_gaikyo2025.pdf

※5 厚生労働省「障害者の利用者負担」

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/service/hutan1.html

※6 厚生労働省「自立訓練に係る報酬・基準について≪論点等≫」(障害福祉サービス等報酬改定検討チーム 第40回 資料4)

https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001159439.pdf

※7 国立障害者リハビリテーションセンター 発達障害情報・支援センター「障害者総合支援法」

https://www.rehab.go.jp/ddis/system/supportact/comprehensive

※8 国立障害者リハビリテーションセンター 発達障害情報・支援センター「発達障害者支援センターとは」

https://www.rehab.go.jp/ddis/action/about

※9 厚生労働省「障害者就業・生活支援センターの概要」

https://www.mhlw.go.jp/content/11704000/001690680.pdf

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