気分の落ち込みの対処法|今すぐできるセルフケアと受診の目安を解説
「理由が思い当たらないのに気持ちが沈む」「前は楽しめていたことが、なぜか楽しくない」。そんな感覚が続くと、自分が弱くなったように思えて、さらにつらくなることがあります。
漠然とした不安がついてまわる、些細なことでイライラする。そうした変化が重なると、この先どうなるのだろうと心細くなるかもしれません。けれど、気分の落ち込みは誰にでも起こるものです。この記事では、主な原因と、今日から試せるセルフケア、考え方のクセへの気づき、人に頼る選択肢、受診の目安を順にご紹介します。

気分の落ち込みはどんなときに起こるのか
落ち込んでいるときに現れやすい変化
変化が現れるのは気持ちの面だけではありません。厚生労働省のサイト「こころの耳」では、憂うつな気分、趣味が楽しめない、食欲や体重の増減、寝つきが悪い、イライラしやすい、疲れやすい、思考力や集中力の低下といった変化が挙げられています。思いあたる変化をメモに書き出しておくと、医師や相談員に伝えるときの材料になります。
同じ資料では、ストレス反応が慢性化すると、まず活気が低下し、次にイライラや不安感を覚えるようになり、最終的に気分が落ち込んだりものごとがおっくうになったりする状態へ近づくと説明されています。今どのあたりにいるのかを知る手がかりになります。
一時的な落ち込みと、続く落ち込みの違い
数日沈んでから自然に戻るのは、誰にでもある波です。注意したいのは、きっかけが解決しても、良いことが起こっても気分が晴れない状態が続く場合です。こうした症状が2週間以上続く場合には「うつ」が疑われるため、精神科や心療内科といった専門家に早めに相談することがすすめられています。
落ち込みは「弱さ」ではない
厚生労働省の資料では、うつ病は年齢や職業に関係なく誰にでも起こり、性格や心の弱さのせいではないと明記されています。几帳面で責任感や正義感が強く、上手な手抜きができずに一人で責任を抱え込みがちな人がなりやすいともいわれています。義務感が強く仕事熱心な人は、それだけエネルギーの放出も多いためと説明されています。まずは「今は消耗している状態だ」と受け止めてみてください。
気分が落ち込む主な原因
厚生労働省の資料では、うつ病を引き起こす原因は一つではなく、生活の中のさまざまな要因が複雑に結びついて生じると説明されています。
出来事やストレスがきっかけになる場合
きっかけになりやすいのが環境の変化です。大切な人との死別や離別、仕事や健康を失うこと、人間関係のトラブル、昇格・降格・結婚といった役割の変化が挙げられています。うれしいはずの出来事も要因になりうる点に注目してください。
睡眠不足・疲労などからだの要因
「こころの耳」では、不眠がある人はない人に比べてうつ病を発症するリスクが高いという研究報告が多いと紹介されています。寝つきに30分以上かかる、途中で何度も目が覚める、熟睡感がない。こうした変化は生活習慣を見直す合図です。
季節や環境の変化
季節によって症状が出たり出なかったりするうつ病は「季節性感情障害」と呼ばれ、秋から冬に出る場合は「冬季うつ病」と呼ばれます。睡眠時間が長くなる・食欲が増す症状が出やすく、日照時間の短さが関係していると考えられています。
女性のホルモンバランスの変化
月経、妊娠・出産、閉経(更年期)など女性ホルモンが大きく変動する時期には、睡眠の問題が生じることがあります。月経前後の体調不良が続く場合は産婦人科への相談も選択肢です。妊娠・出産や更年期などの内分泌の変化は、うつ病の発症要因の一つにも挙げられています。
精神疾患が背景にある場合
気分が落ち込み、憂うつになる状態は、医学的には「抑うつ状態」と呼ばれます。抑うつ状態を示す代表的な病気としてうつ病が知られていますが、不安症(不安障害)、統合失調症、適応障害など、さまざまな精神疾患でみられる症状でもあります。
背景として考えられるものには、環境変化によるストレスが本人の順応力を越えたときに生じる適応障害、躁状態とうつ状態を繰り返す双極性障害、強い不安が中心となるパニック障害や社交不安障害、明らかな身体の病気がないのに倦怠感やめまいなどの不調が続く自律神経失調症、不眠症などの睡眠障害、月経前に落ち込みやイライラが繰り返し現れる月経前症候群(PMS)などがあります。
ただし、症状が似ていても背景はさまざまで、診断ができるのは医師だけです。なお、うつ病のはっきりした原因は現在も分かっておらず、脳内でセロトニンなどの神経伝達物質の機能が低下していると「考えられて」いる段階です。背景にある病気については、うつ病のある方の自立訓練について解説した記事や適応障害と自立訓練について解説した記事もご覧ください。
今すぐできる対処法(セルフケア)
すべてをやろうとする必要はありません。「これならできそう」と思えるものを一つ選んで始めましょう。以下は医療の代わりになるものではなく、つらさが強いときは受診や相談を優先してください。
睡眠を優先する
最初に立て直したいのが睡眠です。厚生労働省の資料でも、十分な休養をとることが挙げられています。就床前4時間のカフェイン摂取を避ける、ぬるめのお湯での入浴や音楽でリラックスする、目覚めたら日光を取り入れるといった工夫が紹介されています。朝どうしても起きられない状態が続く場合は、朝起きられないことと障害の関係を解説した記事も参考になります。
朝の光を浴びる
体内時計の周期は平均24時間10分前後とわずかに長いため、毎日時刻合わせが必要です。体内時計の時刻調節にもっとも大事なのは環境光で、朝に光を多めに浴びることで遅れがちな体内時計を調整しているとされています。起きたらまずカーテンを開けてみてください。生活のリズムを立て直したい方は、生活リズムの整え方について解説した記事もご覧ください。
軽く体を動かす
厚生労働省の資料では、運動が体力増進や気分の向上につながるとされています。ただし意欲が落ちているときは休養が優先です。少し元気が出てきたときに、家の片づけや近所までの散歩など無理のない範囲から始めましょう。
食事のリズムを整える
同じ資料では、1日3食とること、過度の飲酒を避けることが挙げられています。飲酒は睡眠を浅くし、うつを悪化させるとも指摘されています。食欲がないときは、時間だけでもそろえることを目安にしてみてください。
呼吸を整える・体の力を抜く
つらいときにその場をしのぐ方法を知っておくと支えになります。厚生労働省の資料では、苦痛を最小限にする方法として「ゆっくり呼吸する」「腹筋に力を入れて抜く」が紹介されています。
気持ちを書き出す
頭の中で考え続けていると、つらさの正体が見えないまま大きくなります。厚生労働省の資料でも、紙に書き出すことで冷静に整理できると説明されています。「いつ・どこで・何があったか」と「そのときの気分」を分けて書いてみてください。
考え方のクセに気づくという対処法
落ち込むと思考が狭くなる
落ち込んでいるとき、私たちは自分・周囲・将来の三つに悲観的な考えを持ちやすくなります。厚生労働省の資料では、うつ状態で陥りやすい「認知のかたより」として、証拠もないのに否定的な結論を出す、白か黒かで考えるといったパターンが挙げられています。
認知行動療法という考え方
「現実の受け取り方」や「ものの見方」を認知といい、この認知に働きかけて心のストレスを軽くしていく治療法が認知療法・認知行動療法です。出来事があったときに瞬間的に浮かぶ考えは「自動思考」と呼ばれ、これに気づいて働きかけることが役立つとされています。
「その考えは事実か、それとも解釈か」と問い直す
バランスをとる方法として、そう考える理由(根拠)と反対の根拠(反証)を書き出し、両者を「しかし……」でつなぐ方法が紹介されています。「家族や友人が同じように考えていたら、自分は何と声をかけるだろう」と視点を変えるのも有効です。
人に話す・頼るという対処法
一人で抱えるほど落ち込みは長引きやすい
うつ状態のときに現れやすい行動の一つに、周りにうまく助けを求められないことが挙げられています。活動量が減り、「何もできていない」と自分を責める。この悪循環が落ち込みを長引かせます。働けないと感じるときの選択肢については、働けないと感じるときの支援について解説した記事もご覧ください。
話す相手が身近にいないとき
「家族に心配をかけたくない」「友人には話しにくい」という方も多いはずです。そんなときこそ、公的な相談窓口が役に立ちます。
相談できる公的な窓口
厚生労働省は、地域の保健所や保健センター、都道府県・指定都市の精神保健福祉センターを案内しており、電話でも来所でも相談できると説明しています。全国共通の窓口としては「こころの健康相談統一ダイヤル」(0570-064-556)があり、電話をかけた所在地の都道府県・政令指定都市が実施している公的な相談機関につながります。受付の曜日・時間は都道府県によって異なります。
さいたま市にお住まいの方は、市の「こころの電話」(048-762-8554/月〜金曜9時〜17時、祝日・年末年始を除く)を利用できます。匿名での相談も受け付けています。さいたま市以外の埼玉県内にお住まいの方は「埼玉県こころの電話」(048-723-1447/月〜金曜9時〜17時、祝日・年末年始を除く)が窓口になります。
落ち込みが続くときに考えたいこと
受診を考える目安
憂うつな気分、趣味が楽しめない、食欲や睡眠の変化といった症状が2週間以上続く場合には「うつ」が疑われるため、精神科や心療内科に早めに相談することがすすめられています。早い時点で自覚できれば重症化を未然に防げる可能性も高くなります。療養に入る場合の過ごし方については、療養中の過ごし方について解説した記事も参考にしてください。
何科に相談すればよいか
厚生労働省の説明によると、「精神科」と「精神神経科」は名称が違うだけで内容は同じで、こころの病気を専門に診る医療機関です。「心療内科」は心理的な要因でからだに症状が現れる「心身症」をおもな対象としていますが、こころの病気を診ている医療機関もあります。科名だけで分かりにくいときは、直接電話して問い合わせるのもよい方法です。
治療については、うつ病の場合、休養、薬物療法、精神療法を組み合わせて行うのが一般的とされています。不安症では薬物療法や認知行動療法が用いられます。どの方法を選ぶかは症状によって異なるため、医師と相談しながら決めていくことになります。
通院を続ける必要がある場合には、通院医療費の自己負担を軽減する「自立支援医療(精神通院医療)」もあります。うつ病などの気分障害のほか、PTSDなどのストレス関連障害やパニック障害などの不安障害も対象で、公的医療保険で3割の医療費を負担しているところが1割に軽減されます。手続きは自治体により異なるため、お住まいの市区町村の担当窓口にご確認ください。
受診するときに伝えると役立つこと
精神科は予約制の医療機関が多いため、事前に電話で確かめてから受診しましょう。どんな点で困っているのか、何がつらいのかを整理しておくと役立ちます。こころの症状だけでなく、からだの不調や睡眠、食欲の変化も大切な情報です。最初から病名がはっきりしないこともあるため、焦らずじっくり治療を続けることが大切だとされています。
気分の波と付き合う仕組みをつくる
自分の状態を記録する(セルフモニタリング)
厚生労働省の資料では、活動記録表などで自分の現状を観察しながら段階的に活動を増やす方法が紹介されています。睡眠についても、睡眠日誌やカレンダーへの記入で変化が起こりやすい時期を把握しやすくなります。「今日の気分」を10段階で書き込むだけでも、落ち込みに波があることが見えてきます。
落ち込みの前触れを知っておく
記録を続けると、「寝つきが悪くなると数日後に落ち込む」といった自分なりのパターンが見えてきます。厚生労働省の資料でも、自分の考え方や行動のパターンに気づけると再発予防に役立つと説明されています。前触れを知ることは、早めに休むための材料になります。
落ち込んだときの「やることリスト」を先に決めておく
調子が悪いときに「何をすればいいか」を考えるのは負担です。だからこそ元気なうちに決めておくことが役立ちます。厚生労働省の資料では、つらいときに気持ちを紛らわす方法として読書・運動・掃除などの活動や、音楽を聴くことが挙げられています。3つだけ紙に書き、相談窓口の電話番号と一緒に貼っておきましょう。
一人での対処に限界を感じたら
自立訓練(生活訓練)でできること
自立訓練(生活訓練)は、障害者総合支援法にもとづく障害福祉サービスの一つです。生活能力の維持・向上等のため一定期間の訓練が必要な方を対象に、自立した日常生活を営むために必要な訓練や、生活等に関する相談・助言を行います。標準利用期間は24か月(長期入院者等の場合は36か月)です。生活リズムを整えたり対人関係のスキルを身につけたりと、生活の土台をつくる訓練です。詳しくは自立訓練(生活訓練)の利用期間は?原則2年の仕組みと延長の条件を解説をご覧ください。
集団認知行動療法とEQSで自分を知る
メルディアライフネスト浦和では、ライフプログラム、ライフシミュレーショントレーニング、SST(ソーシャルスキルトレーニング)、集団認知行動療法、コネクトプログラム、グループワーク、クリエイティブタイム、フィジカルプログラム、ITスキル、CSP(e-learning)という10のプログラムを用意しています。
テーマに直結するのが集団認知行動療法です。思考の偏りに気づき、行動を変えていくグループワークで、一人で取り組むより気づきが得られやすいのが特徴です。対人関係のスキルを習得するSSTや、軽運動で体調管理と気分の切り替えを行うフィジカルプログラムも支えになります。
出発点となるのが、独自の生活能力評価「EQS」です。「心のしなやかさ」「コミュニケーション能力」「困難に立ち向かう力」の3軸で今の状態を見える化します。その結果をもとに組み立てるのが、マンツーマンのオーダーメイドプログラム「S.I.P(Self-Insight Program)」です。自己理解を深めながら、豊かな社会生活に向けて症状への対処法を身につけていきます。
メルディアライフネスト浦和の支援体制
メルディアライフネスト浦和には、看護師・臨床心理士・精神保健福祉士・社会福祉士などの専門資格をもつ多職種のスタッフが在籍しています。1日の流れは、10:00に通所して朝礼から始まり、午前のプログラム、12:00からの昼休憩をはさんで午後のプログラムへ進み、15:00に振り返りを行って帰宅、というかたちが基本です。個別支援計画に応じて調整でき、計画はおおむね3か月ごとに見直します。
進路面では、リービングネストプログラムという4段階の枠組みに沿って進みます。自立訓練の枠組みの中で就職活動のサポートまで一貫して行えることが大きな強みで、2年間の利用期間内に就職や進学に向かうための生活力を身につけることを原則としています。基本となる進路は「自立訓練(生活訓練)から一般就労へ」という流れです。就職までにもっとトレーニングを積みたい方には、グループ内の就労移行支援「メルディアトータルサポート」へ次のステップとして支援情報を引き継ぐこともできます。
気分の落ち込みに関するよくある質問
Q. どのくらい落ち込みが続いたら受診したほうがよいですか。
A. 憂うつな気分や食欲・睡眠の変化などが2週間以上続く場合は、精神科や心療内科に早めに相談することがすすめられています。2週間に満たなくても、日常生活に支障が出ているなら相談して構いません。
Q. 家族が落ち込んでいるとき、どう接すればよいですか。
A.まずは話を聴くことが支えになります。公的な相談窓口はいずれも無料で、秘密も守られます。埼玉県の精神保健福祉センターでは、精神保健福祉に関する問題を抱えるご本人とご家族を対象に、来所による相談を受け付けています。
まとめ
気分の落ち込みは誰にでも起こり、性格や心の弱さのせいではありません。原因は一つに定まらず、出来事やストレス、睡眠不足や疲労、季節、ホルモンの変動などさまざまな要因が重なって生じます。
対処は段階的です。まず睡眠・光・食事・呼吸といった生活の土台を整え、次に考え方のクセに気づき、そして人に頼る。症状が2週間以上続くときは、精神科や心療内科に早めに相談してください。記録をつけて自分の波を知り、落ち込んだときの「やることリスト」を元気なうちに決めておくことも、次の波を小さくしてくれます。
生活そのものを立て直したいときには、自立訓練(生活訓練)という選択肢もあります。メルディアライフネスト浦和では、EQSで状態を見える化し、S.I.Pと10のプログラムで症状への対処法を身につけるところまで一緒に取り組みます。一人での対処に限界を感じたら、気軽にご相談ください。
メルディアライフネスト浦和では見学・無料相談を受付中です。お気軽にお問い合わせください。
お問い合わせ:https://mlda.jp/mlninquiry/
この記事はメルディアライフネスト浦和のスタッフが監修しています。
出典一覧
※1 厚生労働省「こころの耳:2 ストレスからくる病」
https://kokoro.mhlw.go.jp/nowhow/nh002/
※2 厚生労働省「こころの耳:2 うつ病の主な症状と原因」
https://kokoro.mhlw.go.jp/about-depression/ad002/
※3 厚生労働省「うつ病の認知療法・認知行動療法(患者さんのための資料)」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/kokoro/dl/04.pdf
※4 厚生労働省 e-ヘルスネット「概日リズム睡眠・覚醒障害」
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/heart/k-02-006.html
※5 厚生労働省 e-ヘルスネット「女性の睡眠障害」
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/heart/k-02-005.html
※6 新潟県「【魚沼】メンタルヘルスシリーズ第6回 冬は明るく過ごしましょう-冬季うつ病について-」
https://www.pref.niigata.lg.jp/sec/uonuma_kenkou/1356775277579.html
※7 厚生労働省「こころもメンテしよう:こころを専門に診る病院の種類は?」
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/youth/consultation/hospital/hospital_01.html
※8 厚生労働省「こころもメンテしよう:受診にあたって」
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/youth/consultation/hospital/hospital_04.html
※9 厚生労働省「まもろうよ こころ:電話相談窓口」
https://www.mhlw.go.jp/mamorouyokokoro/soudan/tel/
※10 さいたま市「こころの電話」
https://www.city.saitama.lg.jp/002/001/016/001/p001335.html
※11 厚生労働省「こころもメンテしよう:こころの相談の窓口について」
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/youth/consultation/window/index.html
※12 厚生労働省「自立訓練(機能訓練・生活訓練)に係る報酬・基準について≪論点等≫」
https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/000670106.pdf
※13 厚生労働省「自立支援医療(精神通院医療)について」
https://www.mhlw.go.jp/content/001507767.pdf
※14 厚生労働省「こころの耳:こころの病気 解説」
https://kokoro.mhlw.go.jp/mental-illness/
※15 埼玉県「こころの相談は」





