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【前編】進む自閉スペクトラム症研究~それはがんの研究から始まった~

トピックス2024年09月9日

自閉スペクトラム症の特性や程度、生活における困難度は人それぞれで、幅があります。そのため、患者数が増えているにも関わらず、研究はあまり進んでいません。対症療法のみで、根本的な治療がないといわれている障がいですが、そこに真っ向から取り組んでいる医師がいます。




<金沢大学医薬保健研究域医学系組織細胞学(解剖学第一)医学博士 西山 正章教授>


自閉スペクトラム症の原因はDNA内にあるCHD8の異常

内科医として肝臓がんの治療を行っていた西山 正章教授は、がんを治すべく、原因遺伝子であるCHD8の研究を始めました。「約20年間、CHD8という遺伝子の研究をしていたのです。ところが、約10年前に、自閉症の患者さんに同じようにCHD8に変異が入っていることが分かり、自閉スペクトラム症の研究に転向しました」と自閉スペクトラム症の研究を始めたきっかけを話してくれました。

私たちの身体は37兆個もの細胞から作られています。それぞれ一つの細胞には一つの核(細胞核)があり、その中には2個ずつ対をなした同じ染色体(1組はXとYの性染色体)が23組あります。なぜなら、母親から23個の染色体、父親から23個の染色体を受け継ぎ、対を作るからです。

さらに、それぞれの染色体には、多くの遺伝情報が納められた2重らせん構造のDNAが折り畳まれています。細胞分裂をするときに、安定した状態で複製ができるよう、DNAは2重らせん構造をしているのです。私たちはひとつの細胞である受精卵が、複製をして増えることで人となり、この世に生まれ、成長していきます。さらに、そのDNAにはCHD分子が9種類存在しています。

西山教授は「さまざまな遺伝子の異常が自閉スペクトラム症の原因ですが、多くの場合、神経をつかさどるCHD8(8番目のCHD分子)に変異がみられます」と前置きしたうえで、「実験用のマウスで、染色体にあるDNAから、対になった2本のCHD8を取り除くと、マウスは生まれてくることができませんでした。ところが、片方を残して、もう片方だけ取り除くと、自閉症のマウスが生まれたのです。




実は、CHD8に変異をもつ自閉スペクトラム症患者のご両親の遺伝子を調べると、どちらも正常な場合が多い。ということは、受精前の精子もしくは卵子の段階で、何らかの原因によって遺伝子に変異が起こり、それが細胞分裂して自閉スペクトラム症を発症したということが分かります」と説明してくれました。

CHD8がないとp 53の壁を壊せない

神経で重要な働きをすると考えられているCHD8について、西山教授は「自閉スペクトラム症の患者さんは、受精卵の段階ですでにCHD8が片方なく、その細胞が増殖・分化して成長しているわけです。そのため、全身のどの部分を取ってもCHD8が片方しかないという変異が入っています。それは、神経だけでなく、全身で異常をきたしている可能性があることを示唆しています」と説明してくれました。

いったい、CHD8は身体でどのような役割を果たしているのでしょうか。「実は、人の細胞には誰にでもp 53という高い壁のようなものがあります。私たちは細胞が増殖・分化することで成長するのですが、p 53はそれを防ぐ壁なのです。どうしてそのような壁があるかというと、細胞は増殖・分化していくと、やがてがん化してしまいます。p 53が増殖・分化を防ぐことで、がんになることを阻止しているのです。ちなみに、がん患者の半数以上はp 53に変異が入っているとされています。

CHD8にはp 53の壁を適度に壊す役割があります。つまり、がんにならない程度に細胞を増殖・分化させる働きを担っているのです」と。さらに続けて、「ですから、自閉スペクトラム症患者のように、CHD8が半分しかないと、p 53という壁に小さな穴しか開けられません。細胞が増えていかないためがんにはなりにくいのですが、逆に新しい細胞に生まれかわることができず、老化してしまう可能性があります」と。




 

金沢大学医薬保健研究域医学系組織細胞学(解剖学第一)医学博士 西山 正章教授

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