適応障害で休職するには?診断書のもらい方から休職期間・お金・復職までの流れをわかりやすく解説
「朝、体が動かない」「会社のことを考えると涙が出る」「でも、休みたいなんて言い出せない」。適応障害と診断された方や、その可能性を感じている方から、こうした気持ちはよく聞かれます。
休職は、仕事から逃げることではありません。厚生労働省の職場復帰支援の手引きでは、休業の開始から通常業務への復帰までの流れをあらかじめ明確にしておく必要があるとされています。休職は、働く人が使うことを前提に設計された正規の仕組みです。

この記事では、適応障害で休職を考えはじめた方に向けて、次の内容を時系列で解説します。
- 適応障害で休職するとはどういうことか、うつ病との違い
- 休職を考えたほうがよいサインと、受診の目安・相談先
- 受診から診断書の作成、会社への提出までの手続きの流れ
- 休職期間の目安と、傷病手当金など休職中のお金の制度
- 休職中の過ごし方と、復職に向けた準備の進め方
- 復職以外の選択肢と、ご家族ができること
さいたま市浦和区で自立訓練(生活訓練)を行うメルディアライフネスト浦和が、公的機関の一次情報をもとにお伝えします。
適応障害で休職するとはどういうことか
適応障害とは(ストレス因から離れることの意味)
厚生労働省のポータルサイト「こころの耳」では、適応障害は、環境変化によるストレスが個人の順応力を越えたときに生じる情緒面および行動面の不調と説明されています。うつ病など他の精神疾患の診断がつくには至っていない状態を指し、薬物療法も行われますが、環境調整、環境に慣れること、個人の順応力が増えることなどが回復に重要とされています。
注目したいのは「環境調整」です。原因となっている環境から離れることが、回復に重要な要素として挙げられています。休職は、この環境調整を実行する方法のひとつです。気合いの問題ではなく、ストレス因から離れる時間そのものに意味がある、という考え方です。
なお、適応障害は医師が診断する医学的な診断名です。この記事だけで自身の状態を判断せず、つらい状態が続く場合は精神科・心療内科などの医療機関に相談してみてください。
「休職は逃げ」ではない理由
「同僚に迷惑をかける」「逃げたと思われる」という不安は自然なものです。ただ、制度の側から見ると位置づけは少し違います。手引きは、疾病による休業は多くの労働者にとって働くことへの自信を失わせる出来事であり、必要以上に自信を失った状態での職場復帰は健康や就業能力の回復に好ましくない影響を与える可能性が高いと指摘しています。無理に働き続けるより、いったん離れて回復に専念するほうが結果的に長く働ける。これが制度の考え方です。
適応障害とうつ病はどう違うのか
「こころの耳」の解説では、うつ病は、さまざまな心理的負荷などにより精神活動が低下し、抑うつ気分、興味や関心の欠如、不安・焦燥、食欲低下、不眠などが生じ、生活上の著しい苦痛や機能障害を引き起こす精神疾患とされ、治療は休養、薬物療法、精神療法を組み合わせて行われます。一方の適応障害は、他の精神疾患の診断がつくには至っていない状態を指し、原因となる環境がはっきりしていることが多いのが特徴です。
ただし、この違いを自分で見分けることは困難です。気分の落ち込みは、不安障害、統合失調症、適応障害など、あらゆる精神疾患でみられる症状だからです。動悸や不眠、強い緊張が続く場合も同じで、判断は医師にゆだねるのが安全です。休職の原因となる疾患には双極性障害やパニック障害、不眠症などもあります。うつ病についてはうつ病の方の自立訓練(生活訓練)もご覧ください。
休職を考えたほうがよいサイン
適応障害では、こころの症状より先にからだの不調が現れることもあります。「こうなったら休職」という基準ではなく、医療機関に相談する目安として整理します。当てはまる項目の多さより、その状態がどのくらい続いているかに目を向けてみてください。
からだに出るサイン
眠れない、朝早く目が覚める、何時間寝ても疲れがとれない。食欲がなくなる、または過食が増える。頭痛や胃の痛み、動悸、めまい、強い倦怠感が続く。日曜の夜に体調が崩れる、通勤電車で気分が悪くなる。内科の病院で検査を受けても異常が見つからないのに不調が続く場合は、心療内科や精神科への相談も選択肢になります。
こころに出るサイン
理由もなく涙が出る、少しのことでイライラする、常に緊張していてリラックスできない、何をしても楽しいと感じられない。以前は好きだった趣味に興味がわかない。自分を責める気持ちが強くなる。こうした気分の変化が2週間以上続いている場合は、早めの相談をおすすめします。
仕事ぶりに出るサイン
これまでしなかったミスが増える、集中力が続かない、判断に時間がかかる、締切を守れない、遅刻や欠勤が増える、職場の人間関係を避けるようになり同僚との会話が減る。本人は「気の緩み」と受け取りがちですが、注意力・集中力の低下は体調の変化として現れることがあります。自分を責めるのではなく、体調のサインとして受け止めてみてください。
受診を考える目安と相談先
受診の目安に一律の基準はありませんが、「不調が2週間以上続く」「日常生活や仕事に支障が出ている」「休日に休んでも回復しない」のいずれかに当てはまるなら、一度相談してみる価値があります。初診は予約が必要な医療機関も多いため、早めの連絡が安心です。
無料で相談できる公的な窓口もあります。さいたま市こころの健康センターは、市内在住のおおむね15歳以上の本人・ご家族・関係者からの精神保健福祉に関する相談を無料で受け付けています(048-762-8548、平日9時から17時、祝日・年末年始を除く。通話料は自己負担です)。話を聞いてほしい方向けの「こころの電話」(048-762-8554)もあります。職場に産業医がいる場合は産業医への相談も方法のひとつで、産業医が選任されていない従業員50人未満の事業場では、地域産業保健センターなど事業場外の資源を活用することが手引きでも示されています。職場のメンタルヘルスに関する相談先を、一人で抱え込む前に確認しておくと安心です。
メルディアライフネスト浦和にも、看護師・臨床心理士・精神保健福祉士・社会福祉士などの専門資格をもつ多職種のスタッフが在籍しており、「まず誰に話せばいいかわからない」という段階のご相談にも対応しています。
適応障害で休職するまでの流れ
休職の手続きは大きく4つのステップで進みます。会社ごとに運用は異なりますが、基本の流れは共通しています。
ステップ1:医療機関を受診して相談する
まずは精神科・心療内科などを受診します。初診では、いつごろから、どんな症状が、どのくらいの頻度で出ているか、きっかけとして思い当たる出来事、仕事の内容や勤務時間などを聞かれます。うまく説明できるか不安な方は、メモを用意しておくと安心です。「先週は3日眠れなかった」といった具体的な事実があると、医師も状況をつかみやすくなります。休職を考えていることも遠慮なく伝えてかまいません。ただし診断は医師が行うものであり、希望すれば必ず診断書が出るというものではありません。
ステップ2:診断書を書いてもらう
休職の手続きには、主治医が作成した診断書(病気休業診断書)が必要です。手引きでは、診断書には病気休業を必要とする旨のほか、職場復帰の準備を計画的に行えるよう、必要な療養期間の見込みについて明記してもらうことが望ましいとされています。作成には数日から2週間程度かかることがあり、費用は医療機関ごとに異なります。会社に所定の書式がある場合は、あらかじめ確認して主治医に渡しておくとスムーズです。
ステップ3:会社に申し出る(伝え方のポイント)
診断書ができたら会社に休職を申し出ます。手引きでは、労働者から管理監督者に診断書が提出されて休業が始まり、管理監督者が人事労務管理スタッフ等に連絡する流れが示されています。伝える内容は、次の3点にしぼると整理しやすくなります。
- 医師から療養が必要と診断されたこと
- 診断書に記載された療養期間の見込み
- 休職中の連絡方法(誰と、どのくらいの頻度で、どの手段で)
症状の詳細をどこまで話すかは本人が決めてかまいません。手引きも、主治医と情報交換を行う際に必要な情報は職場で配慮すべき事項を中心とした必要最小限とし、具体的な疾患名は必ずしもこれに含まれないとしています。自分で話す余裕がないときは、家族に付き添ってもらう、書面やメールで伝えるという方法もあります。
ステップ4:就業規則で確認しておきたいこと
休職の条件は法律で一律に決まっているものではなく、会社の就業規則で定められています。手引きでも、私傷病による休業の最長(保障)期間などは労使の十分な協議によって決定し、あらかじめ就業規則等に定めて周知しておくことが望ましいとされています。
確認したいのは、休職できる最長期間、休職中の給与の取り扱い、社会保険料の支払い方法、復職の手続き、休職期間が満了した場合の扱いです。体調が悪いときに規則を読み込むのは負担ですので、人事担当者に要点を説明してもらう方法でもかまいません。
休職期間の目安と、延長を考えるとき
休職期間は一律に決まっていない
「適応障害の休職は何か月が普通ですか」という質問をよくいただきますが、休職期間は一律には決まっていません。就業規則で定められた範囲の中で、主治医の判断をもとに個別に決まるものだからです。手引きも、私傷病による休業の最長(保障)期間などは労使の十分な協議によって決定し、あらかじめ就業規則等に定めて周知しておくことが望ましいとしています。つまり期間の枠組みは会社ごとに設計されるもので、全国共通の日数があるわけではありません。回復のペースにも大きな個人差がありますので、「何か月で治るはず」と自分に期限を課すことは、かえって焦りを生みやすくなります。
診断書に書かれる「療養期間の見込み」
診断書には「◯か月の療養を要する」といった療養期間の見込みが記載されます。これは確定した予定ではなく、現時点での見込みです。当初より早く回復することもあれば、期間の終わりが近づいても復職できる状態に至らないこともあり、どちらも珍しいことではありません。期間内に治さなければと考えるより、通院を続けながら主治医と状態を共有し、そのつど判断していくものと捉えておくと気持ちが楽になります。
延長するときに確認すること
延長が必要になった場合は、主治医に相談してあらためて診断書を作成してもらいます。会社への提出期限が定められていることも多いため、期間満了の直前ではなく少し余裕をもって相談しておくと安心です。あわせて、就業規則で定められた休職の最長期間も確認しておきましょう。回復に時間がかかっている場合は、復職に向けた支援プログラムを利用する選択肢もあります。プログラムごとの期間の考え方は、リワークの期間について解説した記事をご覧ください。
休職中のお金の不安をやわらげる制度
休職を迷う理由として収入への不安を挙げる方は少なくありません。適用の可否は個別の状況によって変わるため、最終的には各窓口でご確認ください。
傷病手当金
傷病手当金は、病気休業中に被保険者とその家族の生活を保障するために設けられた健康保険の制度で、業務外の病気やケガのために会社を休み、事業主から十分な報酬が受けられない場合に支給されます。全国健康保険協会(協会けんぽ)によると、支給の要件は次の4つです。
- 業務外の事由による病気やケガの療養のための休業であること
- 仕事に就くことができないこと
- 連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと
- 休業した期間について給与の支払いがないこと
3つめが「待期3日間」と呼ばれるものです。休んだ日が連続して3日間なければ成立せず、連続2日休んだ後に3日目に仕事をした場合は成立しません。なお待期には、有給休暇や土日・祝日等の公休日も含まれます。
支給額は、支給開始日以前の継続した12か月間の各月の標準報酬月額を平均した額を30で割り、その3分の2に相当する額が1日あたりの目安です。支給期間は、支給を開始した日から通算して1年6か月です。給与の支払いがあっても傷病手当金の額より少ない場合は差額が支給され、退職日までに継続して1年以上の被保険者期間があるなど一定の要件を満たせば、資格喪失後も引き続き支給を受けられる場合があります。健康保険組合によって取り扱いが異なることがあるため、加入先の窓口で確認してください。
自立支援医療(精神通院医療)
通院が長く続くと医療費の負担も気になります。自立支援医療は、心身の障害を除去・軽減するための医療について自己負担額を軽減する公費負担医療制度です。このうち精神通院医療は、精神保健福祉法第5条に規定する統合失調症や、その他の精神疾患(てんかんを含む)を有し、通院による精神医療を継続的に要する病状にある方が対象とされています。厚生労働省が示す対象疾患には、適応障害が分類される「神経症性障害、ストレス関連障害及び身体表現性障害」も含まれています。また、症状がほとんど消失している方でも、軽快状態を維持し再発を予防するために通院治療を続ける必要がある場合は対象になるとされています。
自己負担額は原則1割となり、さらに所得に応じて1か月あたりの自己負担上限額が設定されます。実施主体は都道府県・指定都市です。所得区分によっては対象外となる場合もあるため、ご自身が対象になるかどうかは主治医と窓口にご確認ください。
さいたま市は指定都市にあたり、申請先はお住まいの区の区役所支援課です。申請には、申請書、医師の意見書(所定の様式)、マイナンバーが確認できる書類と身元確認書類などが必要です。加入医療保険の状況がわかるものはマイナ保険証をお持ちでない方が、収入申告書は市町村民税が非課税の方が提出します。受給者証の有効期間や更新(再認定)の手続き時期については、お持ちの受給者証の記載および区役所支援課でご確認ください。浦和区の連絡先は048-829-6143です。
そのほか状況に応じて使える制度
会社を退職した場合、雇用保険の基本手当は原則として離職日の翌日から1年以内が受給期間です。この期間中に、病気、けが、妊娠、出産、育児等の理由で引き続き30日以上働くことができなくなったときは、ハローワークへの申請により、その働くことのできなかった日数だけ受給期間を延長できます。延長できる期間は最長3年間で、当初の1年とあわせると最長4年になります。
療養が長期にわたる場合には障害年金という仕組みもあります。障害基礎年金は、初診日の要件、障害認定日における障害の状態の要件、保険料の納付要件をすべて満たすときに支給されます。要件の判断は複雑ですので、年金事務所での確認をおすすめします。
手続きは自治体・健康保険によって異なる
これらの制度は、自治体や加入している健康保険によって運用や必要書類が異なります。とくに自立支援医療や障害福祉サービスの手続きは自治体により異なりますので、お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口にご確認ください。さいたま市にお住まいの方は、各区役所の支援課 障害福祉係が窓口です。書類も多く体調が悪いときには負担ですので、家族や医療機関のソーシャルワーカー、相談支援専門員に手伝ってもらうことも検討してみてください。
休職中の過ごし方は3つの段階で考える
休職に入ると、今度は「この時間をどう過ごせばいいのか」という戸惑いが出てきます。回復の進み方には個人差がありますが、休養期・回復期・復職準備期の3つの段階でイメージしておくと、いま自分がどのあたりにいるのかを把握しやすくなります。詳しくは休職中の過ごし方について解説した記事もご覧ください。
休養期:まず休むことに専念する
休職に入った直後は、とにかく休むことが最優先です。手引きでも、休業を開始する労働者に対して療養に専念できるよう安心させることが管理監督者等の役割として挙げられています。この時期は生活リズムが乱れても、日中ずっと横になっていても問題ありません。仕事に関する連絡やメールの確認も、可能な範囲で距離を置きましょう。
回復期:できることを少しずつ増やす
眠れる日が増え、食欲が戻り、テレビや読書に興味が向くようになってきたら、少しずつ活動を広げる時期です。ただし体調には波があり、調子がよい日に一気に動いて翌日寝込むという繰り返しになりやすいのがこの時期の特徴です。活動量は「調子がよい日」ではなく「平均的な日」に合わせ、翌日に疲れを持ち越さない範囲を探っていきます。焦って負荷を上げると体調が悪化することもあるため、改善の手ごたえは週単位でゆっくり確かめていくとよいでしょう。時期ごとにやることを整理した休職中にやることをまとめた記事も参考になります。
復職準備期:生活を勤務のかたちに近づける
主治医から復職の話が出るようになったら、生活を勤務のかたちに近づけていく段階です。手引きは職場復帰可否の判断基準の例として、通勤時間帯に一人で安全に通勤ができること、決まった勤務日・時間に就労が継続して可能であること、業務に必要な作業ができること、作業による疲労が翌日までに十分回復すること、適切な睡眠覚醒リズムが整っていること、昼間に眠気がないこと、業務遂行に必要な注意力・集中力が回復していることなどを挙げています。一気に満たす必要はなく、起床時間を勤務日に合わせる、通勤時間帯に電車に乗ってみるといった形で段階的に近づけていきます。
休職中に避けたほうがよいこと
- 休養期に、資格取得や転職活動などの負荷が高い活動を詰め込む
- 復職の時期を、体調ではなく会社の都合や周囲の期待で決めてしまう
- 主治医に「大丈夫です」とだけ伝え、実際の生活状況を共有しない
- 誰とも話さない状態が長く続き、不安を一人で抱え込む
とくに最後は見落とされがちです。手引きも、休業中の労働者が精神的な孤独や復職への不安を感じることに触れ、相談できる場を設けることの重要性を指摘しています。
復職に向けた準備と、焦らないための考え方
厚生労働省が示す職場復帰支援の5つのステップ
手引きでは、職場復帰支援の流れが次の5つのステップで示されています。
- 第1ステップ:病気休業開始及び休業中のケア
- 第2ステップ:主治医による職場復帰可能の判断
- 第3ステップ:職場復帰の可否の判断及び職場復帰支援プランの作成
- 第4ステップ:最終的な職場復帰の決定
- 第5ステップ:職場復帰後のフォローアップ
大切なのは、復職が本人の意思表明だけで決まるものではないという点です。第2ステップで主治医による職場復帰可能の判断が記された診断書を提出し、第3ステップで情報の収集と評価を行ったうえで、事業場内産業保健スタッフ等を中心に可否を判断します。そのうえで復帰日や就業上の配慮を盛り込んだ職場復帰支援プランが作成されます。手続きが多いようですが、本人が一人で背負わなくてよい仕組みでもあります。
復職できる状態かを判断する目安
手引きは、主治医の診断は日常生活における病状の回復程度によって職場復帰の可能性を判断していることが多く、必ずしも職場で求められる業務遂行能力まで回復しているとの判断とは限らないと指摘しています。また、職場復帰はもとの慣れた職場に戻ることが原則とされています。新しい環境への適応には時間と心理的負担を要し、それが再発に結びつく可能性が指摘されているためです。ただしこれは原則で、異動などを誘因として発症したケースでは、他の適応可能と思われる職場への異動を積極的に考慮したほうがよい場合もあるとされています。復職後は、短時間勤務、軽作業や定型業務への従事、残業・深夜業務の禁止、出張制限といった就業上の配慮の例も示されています。復職のタイミングの見極め方は、適応障害からの復職について解説した記事で詳しく取り上げています。
試し出勤・通勤訓練という仕組み
正式な職場復帰の決定の前に、試し出勤制度等を設けている会社もあります。手引きでは次の3つが例として示されています。
- 模擬出勤:通常の勤務時間と同様の時間帯に、デイケア等で模擬的な軽作業やグループミーティングを行ったり、図書館などで時間を過ごす
- 通勤訓練:自宅から職場の近くまで通常の出勤経路で移動し、そのまま、または職場付近で一定時間を過ごした後に帰宅する
- 試し出勤:職場復帰の判断等を目的として、本来の職場などに試験的に一定期間継続して出勤する
導入にあたっては、処遇や災害が発生した場合の対応などを労使間で検討しルールを定めておく必要があるとされています。制度の有無は会社によって異なるため、人事担当者に確認してみてください。
会社の外で復職準備を行う仕組みが、いわゆるリワークです。埼玉障害者職業センターでは、うつ病など精神障害により休職している本人と、休職者を雇用する事業主に対し、主治医の協力を得ながら職場復帰を目指す支援を行っています。復職に必要な生活リズム作りや、再発・再休職予防に向けた自己管理スキルの習得などを支援するもので、説明会参加から終了まで6か月間が目安です。ただし国・地方公共団体・特定独立行政法人は支援対象外とされています。
なお、リワークは医療機関・地域障害者職業センター・企業内の3つだけではありません。自立訓練(生活訓練)や就労移行支援といった障害福祉サービスでも、復職を見据えた訓練を受けることができます。実際、自立訓練の報酬の仕組みでは、自立訓練を受けた後の就労に一定の条件を満たす復職が含まれることが明記されています。リワークという仕組み全体については、リワークとは?復職を支えるプログラムの種類・内容をご覧ください。
復職以外の道もある:生活の土台から整えるという選択肢
復職を目指すことは大切な選択肢ですが、唯一の道ではありません。休職を経て「同じ環境には戻れない」と感じる方、まずは生活のリズムから立て直したい方もいます。ここでは、その場合の選択肢として自立訓練(生活訓練)を紹介します。
自立訓練(生活訓練)でできること
自立訓練(生活訓練)は、障害者総合支援法にもとづく障害福祉サービスのひとつです。地域生活を営むうえで生活能力の維持・向上等のため一定期間の訓練が必要な方を対象に、自立した日常生活または社会生活を営めるよう支援します。生活リズムを整えたり、対人関係のスキルを身につけたりと、生活の土台をつくる訓練を行う場と考えるとイメージしやすいでしょう。標準利用期間は24か月で、長期入院者等の場合は36か月です。
生活訓練は、もともと知的障害・精神障害のある方を主な対象とするサービスとして位置づけられてきました。平成30年4月の改正で、施行規則による障害種別の限定が撤廃され、身体障害の方も含めて障害の区別なく利用できるようになっています。原則としての位置づけは現在も残っており、令和2年3月時点の国保連データでは、生活訓練の利用者の66.4%を精神障害のある方が占めています。
利用期間の考え方や延長の条件は自立訓練(生活訓練)の利用期間は?原則2年の仕組みと延長の条件を解説、適応障害のある方が自立訓練を利用する流れは適応障害と自立訓練について解説した記事でまとめています。
メルディアライフネスト浦和の10のプログラム
メルディアライフネスト浦和では、ライフプログラム(生活全般を整える)、ライフシミュレーショントレーニング(実際の生活場面を想定した実践練習)、SST(対人関係スキルの段階的習得)、集団認知行動療法(思考の偏りに気づき行動を変える)、コネクトプログラム(遊びを通したコミュニケーション)、グループワーク(少人数で話し合い結論を導く練習)、クリエイティブタイム(絵・音楽・手作業による自己表現)、フィジカルプログラム(軽運動による体調管理と気分の切り替え)、ITスキル(基本操作、Officeソフトの習得などを目指したPCスキルアップ講座)、CSP・e-learning(社会生活を円滑に送る上で役に立つ情報の個別学習プログラム)という10のプログラムを用意しています。
休職を経験した方に関わりが深いのはSSTと集団認知行動療法です。SSTでは、上司への報告、断り方、頼み方など職場で負担になりやすい場面を安全な環境で練習できます。集団認知行動療法は、追い詰められやすい考え方のくせを見直すきっかけになります。人と話すこと自体に緊張が強い時期は、遊びから入るコネクトプログラムや、体を動かして気分を切り替えるフィジカルプログラムから始めることもできます。
EQSとS.I.Pによる個別支援
メルディアライフネスト浦和では、独自の評価指標EQSを用いて、「心のしなやかさ」「コミュニケーション能力」「困難に立ち向かう力」の3軸で状態を評価します。復職や就職の可否を判定するものではなく、いま何が整っていて何が負担になりやすいのかを、本人とスタッフが一緒に把握するための道具です。
このEQSの結果をもとに組み立てるのがS.I.P(Self-Insight Program)です。マンツーマンのオーダーメイドプログラムで、自己理解を深めながら豊かな社会生活に向けて症状への対処法を身につけていきます。10のプログラムから必要なものを選び、組み合わせを変えながら進めます。個別支援計画はおおむね3か月ごとに見直し、本人の変化に合わせて柔軟に修正します。
1日のスケジュールと通所のイメージ
メルディアライフネスト浦和の1日は、10:00の通所・朝礼から始まります。10:10から12:00までが午前のプログラム、12:00から13:00までが昼休憩、13:00から15:00までが午後のプログラム、15:00から15:30が振り返りと帰宅の時間です。
決まった時間に外出して人と会う習慣そのものが、生活リズムを立て直すトレーニングになります。内容や参加時間は個別支援計画に応じて調整可能ですので、「はじめは週2日、午前だけ」というペースから始めることもできます。事業所はJR京浜東北線の北浦和駅から徒歩4分の場所にあります。
就職活動のサポートまで一貫して行う体制
メルディアライフネスト浦和の特徴は、自立訓練単独で就職までサポートできる点です。就労移行支援事業所メルディアトータルサポート上野で培ったノウハウを活用し、進路相談、見学・実習、応募書類の添削、面接サポート、職場と必要な配慮を調整する合理的配慮調整、就職後の定着支援まで、自立訓練の枠組みの中で一貫して行います。
基本となる進路は「自立訓練(生活訓練)から一般就労へ」という流れです。2年間の利用期間内で就職や進学に向かうための生活力を身につけることを原則としており、大手事業所によくある「就労移行支援の利用を前提とした4年プラン」とは設計が異なります。そのうえで、就職までにもっとトレーニングを積みたいという方には、グループ内の就労移行支援事業所メルディアトータルサポートへ次のステップとして支援情報をスムーズに引き継ぐこともできます。あくまで選択肢のひとつであり、必ず進まなければならない経路ではありません。
ご家族・周囲の方ができること
ご家族から「どう接すればいいのかわからない」という声をいただくことがあります。手引きは、円滑な職場復帰には家族によるサポートも重要としながら、本人の心の健康問題が家族に強い心理的負担を与えていることもあると指摘し、家族からの相談対応など事業場として可能な支援を行うことも望ましいとしています。支える側も情報と相談先を持ってよい、ということです。
まず、回復を急かさないことです。「そろそろ働けそう?」という問いかけは、励ましのつもりでも本人には期限として響くことがあります。次に、生活の変化を静かに見ておくことです。睡眠、食事、外出の様子は、本人が自覚するより先に変化が現れることがあります。手引きでも、職場復帰の判断材料のひとつとして家庭での状態についての家族からの情報が挙げられています。
そして、家族が抱え込まないことです。心配な気持ちを一人で持ち続けるのは負担が大きく、支える側の体調にも影響します。さいたま市こころの健康センターは、本人だけでなくご家族や関係者からの相談も受け付けています。メルディアライフネスト浦和でも、看護師・臨床心理士・精神保健福祉士・社会福祉士などの専門資格をもつ多職種のスタッフが、ご本人だけでなくご家族からのご相談に対応しています。
適応障害の休職に関するよくある質問
Q. 適応障害で休職すると、会社に病名が知られてしまいますか。
診断書を提出する以上、休業が必要である旨は会社に伝わります。ただし手引きは、主治医と情報交換を行う際に必要な情報は職場で配慮すべき内容を中心とし、具体的な疾患名は必ずしもこれに含まれないとしています。どこまで伝えるかは主治医や人事担当者と相談できます。
Q. 休職中に給与は支払われますか。
休職中の給与の取り扱いは会社の就業規則によります。無給となる場合は、健康保険の傷病手当金の対象になる可能性があります。加入している健康保険の窓口で確認してください。
Q. 休職期間中に会社から連絡が来るのは普通ですか。
手引きでは、病気休業期間中も休業者に接触することが望ましい結果をもたらすこともあるとされる一方、接触にあたっては必要な連絡事項などを除き、主治医と連絡をとったうえで実施するともされています。頻度や方法に負担を感じる場合は、遠慮なく相談してかまいません。
Q. 休職と退職、どちらを選ぶべきですか。
どちらが正しいという答えはありません。ただ、体調が悪いときは判断力が落ちやすいため、大きな決断は回復を待ってからのほうが安全です。退職を選んだ場合も、傷病手当金の資格喪失後の継続給付や雇用保険の受給期間の延長といった制度があります。判断の前に、使える制度を確認しておくことをおすすめします。
Q. 復職しても、また同じことになりそうで不安です。
その不安は自然なものです。手引きは、心の健康問題は再燃・再発することも少なくないため、フォローアップ期間を終えた後も再発の予防のため慎重な対応が必要としています。復職後の就業上の配慮や、リワーク、自立訓練(生活訓練)といった準備の仕組みを組み合わせ、再発のリスクを下げていく考え方が一般的です。
Q. 障害者手帳がなくても自立訓練は利用できますか。
自立訓練(生活訓練)は、地域生活を営むうえで生活能力の維持・向上等のため一定期間の訓練が必要な障害者が対象とされています。手帳の有無を含めた要件や手続きは自治体により異なりますので、お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口にご確認ください。
まとめ
適応障害で休職を考えるとき、多くの方が最初につまずくのは「休んでいいのかどうか」という気持ちの部分です。しかし制度の側から見れば、休職は働く人があらかじめ使えるように整えられた仕組みであり、環境から離れること自体が回復にとって重要な要素とされています。
この記事の要点を整理します。
- 休職の手続きは、受診、診断書の作成、会社への申し出、就業規則の確認という流れで進む
- 休職期間は一律に決まっておらず、就業規則の範囲内で主治医の判断をもとに個別に決まる
- 傷病手当金は待期3日を経て4日目以降が対象となり、支給開始日から通算1年6か月が支給期間
- 自立支援医療は原則1割負担で、所得に応じた1か月あたりの自己負担上限額が設定される
- 休職中の過ごし方は、休養期・回復期・復職準備期の3段階でイメージすると整理しやすい
- 復職は厚生労働省が示す5つのステップに沿って進み、本人一人で判断するものではない
- 復職以外にも、自立訓練(生活訓練)で生活の土台から整えるという選択肢がある
いま体調が思わしくない方は、まず休むことを優先してください。そのうえで少し余裕が出てきたときに、この記事で紹介した制度や相談先を思い出していただければ幸いです。ひとりで抱え込まず、医療機関や公的な窓口、そして事業所を選択肢として使ってみてください。
メルディアライフネスト浦和では見学・無料相談を受付中です。お気軽にお問い合わせください。
お問い合わせ:https://mlda.jp/mlninquiry/
この記事はメルディアライフネスト浦和のスタッフが監修しています。
出典一覧
※1 厚生労働省「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」
https://www.mhlw.go.jp/content/000561013.pdf
※2 厚生労働省 こころの耳「こころの病気 解説」
https://kokoro.mhlw.go.jp/mental-illness/
※3 さいたま市「さいたま市こころの健康センター 相談のご案内」
https://www.city.saitama.lg.jp/008/016/009/p118376.html
※4 全国健康保険協会「傷病手当金」
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/benefit/injury_and_sickness_allowance/index.html
※5 厚生労働省「自立支援医療(精神通院医療)の概要」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/jiritsu/seishin.html
※6 厚生労働省「自立支援医療の経過的特例について」(社会保障審議会障害者部会 第138回 資料1)
https://www.mhlw.go.jp/content/12201000/001168491.pdf
※7 さいたま市「自立支援医療(精神通院医療)の給付の申請について」
https://www.city.saitama.lg.jp/002/003/004/003/004/p001350.html
※8 厚生労働省 ハローワークインターネットサービス「基本手当について」
https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_basicbenefit.html
※9 日本年金機構「障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額」
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/shougainenkin/jukyu-yoken/20150514.html
※10 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 埼玉障害者職業センター「障害のある方へのサービス」
https://www.jeed.go.jp/location/chiiki/saitama/11_saitama_service1.html
※11 厚生労働省「自立訓練(機能訓練・生活訓練)に係る報酬・基準について」





