見えなくなって見えてきた
皆さんこんにちわ！早いもので今年もあと２ヶ月となり、近場の紅葉が待ち遠しい支援員Mです。
私は朝起きたら、まずは窓の外を見て、晴れてるとか雨が降ってるとか思いながら身支度を始めます。
そのように、目に入る空模様や愛猫の様子を何気なく認識するのですが、私にはその情報を目から取り入れることができない友人Aさんがいます。
Aさんは、30年前に網膜色素変性症により視力を失いました。それでも結婚し出産し育児もして、家事もして仕事もしています。何ともスーパーウーマンです。当たり前のように目を開ければ景色や行き交う人の顔が見える私ですが、まるで何も見えなくなったらどうでしょう。怖くて一歩も外に出ることすら、できないと思います。
ところがAさんは、見えないのに龍馬に会いたくて一人で桂浜に行ったり、ホノルルマラソンに出たり、ピアノやギターを弾いたりと相当なチャレンジャーです。そんなAさんは、これまで白状を駆使しながら、そして耳から入る情報を基に空間認知をしていました。
鼓膜に伝わる微妙な圧力や響きを通して、屋内に入ったとか屋外に出たとか、右側に壁かあるとか様々な情報を察知していました。ところが、その大事な耳の聞こえが最近特に悪くなったと感じはじめたので、近所の耳鼻科で診察してもらったそうです。その結果、遺伝子が関係すると思われる難聴と診断され、その検査のために大学病院を紹介されたそうです。場合によっては難病認定されるほどの難しい病らしいです。その検査に先立ち、当面は補聴器を使うことになったので地元の駅前にある補聴器店に行くことになりました。
初めて訪れる場所の場合、さすがのAさんでも単独では歩行できないため、先日歩行訓練も兼ねて同行して来ました。駅前と言うこともあり、歩道には点字ブロックが敷設されてはいるのですが、途中どうしても信号機の無い横断歩道を2ヶ所渡らなければなりませんでした。しかも、横断歩道にはどちらも点字ブロックが敷設されていません。これには私もどうしようかと迷いましたが、本人は足元のかすかな段差やブロックや花壇など、なにかしらを手掛かりにあたかも見えているかのように頭の中に地図を書いて行きました。そして、点字ブロックがない歩道も二度三度と歩行訓練していく中で、自分なりの止まる場所や曲がる場所などの道しるべを作りながら歩いていくのでした。Aさん曰く、見えなくなって見えて来たものがたくさんあるそうです。
結果、約1時間の歩行訓練で駅から補聴器店までほぼ単独で行き来するまでになりました。
視力を失い、さらに今度は聴覚まで失いかねないにも関わらず、Aさんは常に前向きに生きています。私には全く理解できないほどタフネスです。見えているのにも関わらず、慣れないとはいえ都内の道にいまだに迷う私はただただ驚くばかりです。
でも、私はそんなAさんの役に立てることが少しでもできればうれしいです。
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